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 僕とひかりは高二。

 僕の妹のちはやは高一。僕たちとは別の学校に通っている。

「あれ? ちはや、来ないな」

 声がしてから一分ほど経つ。

 僕の家族は、外から帰って来ると、必ずリビングに顔を出してから自分の部屋などに行くのだが。

「どうしたんだろう?」

 ひかりが心配そうな顔をする。僕の幼なじみであるひかりは、むろん、ちはやとも幼なじみだ。幼いころ、一緒に風呂に入っていたくらい仲良しだ。今だって、入ろうと思えば一緒に入るだろう。なんてことを考えたと気づかれたら、

「今、想像したよね!」

 と、ひかりにまた言われかねないな。

「ちょっと見て来る」

 僕はソファから立ち上がった。

「あ。私も行く」

 ひかりが言った。

 ちょうどそのとき、リビングに、ちはやが入って来た。

 なぜか、ちはやは険しい顔をしていて、にらむように僕を見た。そして、まだソファに座っているひかりの方も見ると、驚いたように目を見開き、ギギギ、と首を回して、また僕を見た。

 ちはやは、さっきよりさらに険しい顔になっていて、

「おお、おにいいいいちゃん」

 と、しぼりだすような声で言った。

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