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「な、なんだよ?」
僕が言うと、ちはやは落ち着こうとするかのように、大きく呼吸をした。す~は~。
「今、私は、帰って来た」
ちはやは、一語一語に力を込めた。
「あ、ああ、だよな、知ってる」
「玄関のドアを開けると、お兄ちゃんの靴と共に、女物の靴があった。私のではない。お母さんのでもない。おおう? さてはさては、お兄ちゃんが女の子を連れ込んだなあ? とにやにやしながら靴をぬいであがったら」
「いや、女の子って、ひか……」
僕の言葉を、ちはやは無視して続ける。
「ん? なんだ、紙袋が置いてあるぞ。中は、んーっ? これは、女の子の制服じゃないか!? なんだ? 何だ!? なんでここにっ!? まさか、今、連れ込まれた女は下着姿なのか!?」
「いや、あれは雨にっ。持ち帰るのを忘れないように玄関んとこにっ。って、連れ込まれた女って言い方どうなんだよ!」
「ええい、黙れ黙れい! こりゃとんでもない場面に遭遇してしまうかもしれないぞっ、えっ、よもやっ、しっ、下着姿以上のことになっていたら!? と、おそるおそるリビングへと来てみたらっ」
と、そこで、ちはやはぎゅっと両手を握りこぶしにした。
「なんと。彼女に。妹の服。着せてるーっ。何プレイだよ!? 妹プレイ? 義妹プレイ? それとも、ただの、コスプレイ!?」
「いや、そんな、韻踏んでる感じにすんなよ」
「しかも、そのTシャツ、私のお気に入り、一張羅だぞっ」
「ええっ、そうなの!? ごめん、ちはやちゃん、すぐぬぐっ」
ひかりが慌てると、
「いや、ぬがなくていいっ、ぬがなくてよいぞっ」
ちはやは両手を開いて、横にぶんぶんと振り、
「私が、ぬがせる」
目を、キラリとさせた。
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