第18話 エルフとド〇キで爆買い
悠真は大型のクーラーボックスと氷、そして大量の保冷剤をカートに入れた。魔石付きオークがギルドに高く買取ってもらえるのを見込んで、せっかくだから異世界から来た皆なに
まずは、ドワーフのガルドの興味を引きそうな金属加工用の工具一式。そして、「ドワーフと言えば酒好き」という浅い知識から、飲み会用とお土産用でビールを2ケース購入し、さらに日本酒とウイスキーなど数本とおつまみ系をカゴに入れた。
ゼノスは狼の顔だから肉食かと思ったら、何でも食べる雑食だそうだ。子だくさんだとフィネアスが教えてくれたので、子供用玩具や保存がきくレトルト食品(ペット用にするか迷ったが、人間が食べるものにした)を買い、子供がたくさんいるなら絶対喜ぶだろうとカレーのルウも大量に買った。後で作り方を教えてあげよう。
ついでに、疑問に思っていた魔石付きオークの肉の味を尋ねてみた。醜悪な見た目だが、普通のオークの肉は美味しいらしく、アルテミシアではよく食べられているという。しかし、魔石付きオークの肉を食べた話など、彼でも聞いたことがないらしい。
フィネアスは、宿屋の食事に使う鳥獣狩猟の指名依頼よりも、魔石付きオークの肉をギルドに高く買取ってもらう方が金になると力説し、「明日、また宿屋への依頼分を狩りに行けばよいから」などと言い出した。悠真は、その発言にトラブル
「それなら、ここには生鮮食品売場もあるから、肉も売ってるし適当に買って納品すればいい」と説得した。フィネアスはパック詰めされた肉を不思議そうに見ていたが、悠真がバーベキューが5回出来る位の量の牛肉や豚肉、鶏肉などを選んでカゴに入れた。
リリエッタには、うちの店にあるご当地キティといちごミルクキャンディーなどのお菓子の詰め合わせが良いだろうと思い、特に買わなかった。
フィネアスにはエルフはお茶をよく飲むというので、紅茶とインスタントコーヒー、砂糖などを商品の説明をして自分で選んでもらう。忘れずに安価なスウェットとTシャツも人数分購入した。
悠真は結構な額の買い物の支払いをしてから、フィネアスに「せめて酒代を少し出せないか」と尋ねた。すると、フィネアスは手持ちは銅貨が数枚しかないという。お金は基本、冒険者ギルドに預けておくのが常識なのだそうだ。
リリエッタが金貨を持っていたことを指摘すると、「この前の依頼でまとまった報酬がでたから、今までの借金を返済しに行く途中にユウマの店を見つけたのだろう」と推測を教えてくれた。
(リリエッタがご当地キティを金貨1枚で買ってたらどうなってたかな…)と悠真がぼんやり考えている時、フィネアスから「今さらだが、我々がアルテミシアに帰れる方法がわからないのに、こんなに土産まで買って大丈夫なのか?」と逆に心配される。
簡易的な台車を持ってきていたので、帰り道はガラガラと台車を引っ張って店に戻った。ちょうど店に着くと、裏口に陽福菜館の出前が到着していた。
「おう、悠真じゃんか、久しぶり! 相変わらず寂しい店だな」
そう言って、熱々の出前を運んできたのは、陽福菜館の二代目店主、福本竜太。悠真の中学校時代のクラスメイトで幼馴染だ。
「寂しい店じゃなくて営業時間終わってるだけだ、竜太。今日、知り合いが大勢来ててさ。多めに頼んだんだ」
「おうよ。ってか、出てきたパーカーのフードかぶった可愛い娘、誰?
竜太は裏口に出てきたリリエッタたちをからかいながら、悠真が買ってきた缶ビールのケースを目ざとく見つけ、「これから飲み会やるのか?、俺も混ぜてくれ」と店の奥に入っていこうとした。
悠真は慌てて竜太を止めた。
「お前の店まだ営業中じゃないか! 待て! 料理はこ、ここに置いてくれ! ちょ、ちょっと今日は知り合いだけの集まりなんだ!」
悠真はなんとか竜太の侵入を阻止した。
「なんだよ、ケチ。まあいいや、代金はハイ、2万7300円な。ザーサイ盛合せと中華スープはサービスだから」と伝票を渡された。
代金を支払い、竜太を追い返すことに成功したが、悠真は冷や汗が止まらなかった。もし竜太が倉庫を抜け、店内でドワーフや獣人を見たら、この町の中華の勇者は一体どんな反応をするだろうか。この異世界の仲間たちの存在を、当分は内緒にしておくべきだと、悠真は心に誓った。
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