第17話 エルフを連れ買い出し
「女性と夜二人で外出はトラブルになりやすいから、リリエッタはここにいてくれ。もし、出前が来たらフードは必ずかぶって品物だけ受けとっておいてくれないか。お金は置いていくから持ってきた人に渡してくれ。それと、フィネアスさんは一緒に買い物に行ってもらいます」
悠真はそう言いながら、店にたまたま置いてあった帽子と、くたびれた深緑色のジャンパーをフィネアスに着てもらった。
サイズは合うものの、悠真が着ても様にならない作業着のようなジャンパーだ。しかし、モデルのような抜群のスタイルを持つフィネアスが着ると、その立ち姿、すらりとした手足の長さから、どこぞのハイブランドの新作かと見紛うほどに格好良く見えてしまうから不思議だ。エルフの持つ根源的な美しさには、既製服の持つ庶民性も太刀打ちできないらしい。
リリエッタはフードを深く被り、不満げではあるが頷いた。悠真は彼女の不満の理由が、自分ではなくフィアネスが連れて行かれることにあると察しつつも、この場を収めるため敢えて触れなかった。
徒歩で往復30分程度かかる道のりだが、オークの死体を積んだままのトラックをこの場から動かすわけにはいかない。まだ夜になりきらない薄闇が街を包み始めた頃、悠真とフィアネスは店を出た。
夜はいっそう人通りがなくなったシャッター街の商店街を抜け、ペンギンが目印のディスカウントストアに向かう。フィネアスはリリエッタよりも歳上なだけあり、道中で騒いだり、大声を上げたりはしない。しかし、街灯の明るさや、整然と立ち並ぶ建物の多さ、そして夜だというのに途切れることなく走る車の数と、そのエンジン音には、隠しきれないほどの驚きをあらわにして、キョロキョロと周囲を見回している。彼の故郷であるアルテミシアの街並みとは、あまりにもかけ離れているのだろう。
悠真はそんなフィネアスに、時折、道すがらの光景や車について簡単に説明をしたが、あまり会話らしい会話もないまま、ディスカウントストアに到着した。
「すごい……これは、一体どういう用途の建築物なんだ?」
フィネアスは、店舗の前に延々と並ぶ自動車の群れ、つまり駐車場に並ぶ車の数に、驚嘆の声を上げた。悠真は「これは車を置いておく場所だよ」とだけ説明し、フィネアスの驚きを軽く流すことで、彼が過度に目立つことを避けようとした。
入店したフィネアスは、煌々と照らされた店内の眩しすぎる照明に目を開けていられないと言い出した。悠真は慌ててサングラスを買おうとしたが、エルフの長い耳を出すためにかける際に帽子を脱がなくてはいけないことに気づき、断念する。代わりに、DIYコーナーで見つけたゴム紐で固定する保護ゴーグルを見繕った。
フィネアスが「パーティー全員分欲しい」と言い出したため、悠真はそれが普段使いにしか使えないことと、火に弱いという素材の脆弱性を説明してから購入した。さらには、世話になっている宿屋の主人にも買ってやりたいと言うので、ゴーグルをカートに入れようとした。しかし、フィネアスは先ほど試着を断念したサングラスで良いと言う。悠真は言われるままにそれを買った。
異世界では、サングラスやゴーグルといった遮光・保護具が売れることがわかったため、「絶対に仕入れよう」と、悠真はビジネスチャンスを見出すのだった。
買ったゴーグルをフィネアスにかけてやると、その退廃的な美しさは、まるでどこぞのファッションモデルにしか見えない。悠真も試しにかけてみるが、鏡に映った自分はただの不審な変な人にしか見えず、エルフの美形さに改めて嫉妬心を覚えた。
店内には、いつものあの曲が店内放送として流れている。フィネアスは最初はそれを「呪詛を唱えているように聴こえる」と耳を塞いでいたが、たった5分も経たないうちに、慣れたらしく口ずさめるほどに馴染んでいた。エルフの驚異的な順応性を目の当たりにした悠真は、苦笑するしかなかった。
「ユウマ!見てくれ! この『冷気を閉じ込めるという
レジャー用品のコーナーにたどり着いたフィアネスが、目を輝かせてクーラーボックスを指さした。
悠真は「これは魔法じゃない、断熱材だよ」と説明したが、彼の疑問がすぐに解消されるとは思えなかった。
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