第5話 口うるさい小姑のくせに

「今夜はゆっくり休め」


 グラスを空にすると、クラークはグラスを置く。そのまま戻ろうとする気配を察した私は思わず彼を呼び止めた。


「クラーク」


 クラークは肩越しに振り向いた。


「私、誰か一人になんて決められない。みんな大事な戦友だもの」

「だったらそう言えばいい」

「それはそうだけど」


 それで男達は納得してくれるだろうか。いかにも関心なさそうなクラークの返事に私は不満を膨らませる。


「他に言い方はないの?」

「それはお前が考えることだろう。俺には関係ない」

「本当に?」


 私は一歩前に出た。


「本当に関係ないと思っているの?」

「思っているさ」


 まるでどん底に突き落とされたかのような失墜感で返す言葉を失った。

 立ち尽くす私の前を横切って、ワインの瓶を握って持つ。あと一杯だけグラスに注ぐとワインの瓶を持ち去った。


「お休み」

「お休みなさい」


 ドアは静かに閉じられた。まるでこれ以上の詮索はさせないとでもいうように。

 私は応接セットのソファにポスンと座る。空虚だった。クラークが持ってきたのは、サザエのつぼ焼きにイワシの酢漬け、ローストビーフと焼き野菜、トウモロコシのムース、カボチャのプディング。どれも私の好物だ。


 シモンやジャスティン、レイの三人に選ばせたら、もっと別のものを持ってきただろう。

 私は両手で顔を覆い、長く太い息を吐く。

 クラークはどうして好きだと言ってくれなかったのか。本当に彼にとっては私の守役でしかないのだろうか。急に胸が痛くなり、涙がツツウと頬を流れる。どうして私は泣いているのか。クラークに突き放された気がして涙が止まらない。


 クラークなんて口うるさい小姑だ。

 子供の頃からずっと一緒だった幼馴染みだ。


 それだけだと言われた気がして涙が止まらない。それでも腹はすいている。私は泣きながらイワシの酢漬けを口にした。せっかくクラークが持ってきてくれた品々だ。次にサザエのつぼ焼きに手をつける。美味かった。どれも全部美味かった。

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