第6話 いつもと変わりのない朝
泣き腫らした目をして翌朝、私はいつものようにシモンが運んでくれる朝食を待っていた。
シモンはテーブルに白いクロスを掛け、ナイフとフォークとスプーンを並べ、角グラスを二つ置く。
「聖女様。お飲み物はいかがいたしましょうか」
「オレンジジュースと牛乳にしてちょうだい」
「かしこまりました」
シモンはまるで何事もなかったようにグラスにそれらを注いでいた。私も何事もなかったように席に着く。今日の卵料理はスクランブルエッグにトリュフのスライスを乗せたもの。あとは野菜サラダと焼きたてのパン、コーンポタージュと、カクテルグラスに盛られた枝豆のムースだ。
「失礼致しました」
シモンはトレイを下げて一礼する。
誰もが自分の役割に徹しているようで、いたたまれない。泣きはらした顔の理由も聞いてくれない。私はパンにジャムを塗る。シモンがドアを開けて去る。昨日の返事をせがむでもなし、大人の男の顔だった。
私にはまだ使命が残されている。アウベス軍の壊滅だ。先の戦いでは劣勢とみるやいなや撤収したが、今度こそ奴らを叩き潰す。
色恋沙汰で動揺している場合じゃない。
私はシャンと背筋を伸ばしてスクランブルエッグを口にする。
食事が済んだ頃、再びシモンが皿を片付けに来た。私は全部平らげた。空になった皿とグラスをトレイに乗せて、やはり無駄口を叩かず去っていく。
私は彼らと向き合い、クラークが言ってくれたように今は誰かをひとり選ぶことはできないというべきなのかもしれないが、彼らの方もそれを言わせない空気をまとっている。
今はアウベス国軍への攻撃をどうするのか、軍事会議を開き、遂行する任務に全員が撤するべきだと私も思う。私はシモンを呼びつけ、ジャスティンとレイとクラークに部屋に来るよう言いつけた。その中には彼はいない。シモンの頬が微かに歪んだ。
「かしこまりました」
彼は粛々と頷いて部屋を出る。
呼び出された三人が集まったところで、立ったまま私が口火を切った。
「アウベス国軍を壊滅させます。どんな布陣で戦うべきか意見をちょうだい」
「今回は今までのように迎え撃つのではなく、進撃です。前軍と後軍に分けていくのもひとつの手だと思います」
「そうなると前軍はジャスティンで、後軍はレイになるわね」
クラークの戦略に私はうなづいた。
「クラークには前軍の指揮を、私は後軍の指揮をとります」
「聖女様。もう何度も申し上げてきましたが」
「戦場には出て来るなと言いたいんでしょう?」
諫めるクラークに私は言い返す。
「これまで散々粉をかけられてきたアウベス国軍にはいい加減頭に来ているの。レーザービームで蜂の巣にしてやるわ」
「聖女様が最前線に立つのは承服致しかねます」
レイがすぐさま口を挟んできた。
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