4.されこうべと血

第15話 されこうべと血①


 山中の空気は、どうしてこんなにまで濃いのだろうか。

 冷たい水気と、それから新鮮な草木の溶けたようなのと、腐った樹が溶けたようなのと、全部が混ざって、ああ、息苦しい。

 はあ、はあ、と息せき切れる毎に、喉の奥から血が滲む。

 血の泡が、口の端に吹いている。茜襷を掴んで拭った。

 まだ取れない。

 ああだめだ、頭の中が、ぐずぐずと溶けてゆく。

 約束したのに。

 霜が終わるころに、迎えにいらっしてくださいと。

 ああ、兄様。

 竜円様。

 どうして、


 どうして私を裏切りなさったのか。


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