　クロームが魔術師達を呼んだその頃、ディオロイ城から出ようとしているシャロが、お城の廊下にあるシャロの身長よりも遥かに大きな窓を開けて外を出ようとしていた

「……なに？」

　大きな窓に触れようとした時、お城の中が話し声がバタバタと騒がしくなりはじめた

「早く帰らないと……」

　騒がしい足音がシャロがいる場所から近づいたり遠くなったりするのを聞きながら、改めて窓に触れた。開けようと少し窓を押した時、バチンと指先に一瞬電気が走り、すぐに手を引いた

「結界？」

　少し痛む両手を握りしめながら窓を見ると、お城の外にある大きな木の枝がゆらゆらと揺れて木の葉が舞い落ちていく。それを見ながらどう出ようか、ため息をつくと、シャロの右肩に馴染みのある重みと肩を捕まれる感覚がきた。少し顔を横に向けるとシャロの右肩に止まったリリーが少し羽根を広げていた

「シャロ、大丈夫？」

「大丈夫じゃないよ、リリーよく入れたね」

「さっきたくさん食べたから入れたよ」

「それは良かった。ここからすぐ出られそう？」

「大丈夫、出られるよ。でも、その前に……」

　話の途中、シャロの体の周りをグルリと一周した後、リビングの方へと少し進んでシャロの元に戻ってきた

「お腹がすくから、おやつもらって帰ろう」

「しょうがないね、急いで貰いに行こっか」

　リリーの話にため息混じりに答えると、まだ家政婦達や魔術師達の騒がしさが残るなか、一緒にリビングの方へと向かっていった

「ちょっと……。一体どこに行ったのよ……」

　リリーがシャロの元へ向かい、町に一人残されたシャーロット。町の雰囲気に慣れてもまだ道を覚えていないため、同じ道を何度も行き来したり、リリーが戻ってくるかと空を何度も見上げる

「どうしましょう、一旦帰るべきかしら……でも、どっちの家に……」

　ずっとウロウロと同じ場所を歩くシャーロットに気づいた人達がチラチラと不思議そうに見ながら通り過ぎていく。しばらくウロウロと動きながら悩んでいると、前にリリーと訪ねたパン屋の看板を見つけた

「今すぐ迷っても仕方ないわね、ちょっと寄り道をしながらお散歩でもして考えましょ」

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