第15話 魔術の使い手

「で、どこに行くのよ?」

 リリーの少し後を歩くシャーロット。昨日よりも町の雰囲気に慣れて、スタスタと町の道路の真ん中をリリーと歩く

「魔術を使っている人を探すの、それを見て練習するの」

 少し疲れたリリーがシャーロットの左肩に止まりそう返事をするとシャーロットが少し首をかしげた

「練習?」

「そう、シャロと練習するの、魔術の練習」

「無理よ。私はお母様とお父様の魔術をずっと側で見てきたのよ。それでも使えないのだから」

 シャーロットが少しうつ向き呟くように言うと、左肩に止まっていたリリーが勢いつけて、雲一つない空へと飛び立った




「リリーの言う通りだ」

 一方その頃、再びディオロイ城に戻ってきたシャロはシャーロットの部屋の隣にあったはずの扉が無くなっているのを確認して残念そうにため息をついていた

「他に移動したとかじゃないのか……」

 扉があった場所の壁を触りながら周辺を見渡す。特に変わった所が無さそうだと思っていると、急に廊下にパタパタと騒がしい足音と急ぐ声が響いた。シャロも続くように後を追いかけると、ディオロイ城の広い玄関先で、クロームが家政婦達に出迎えを受けていた

「お帰りなさいませ」

 お城の中に入るクロームを家政婦達が次々に頭を下げ出迎える。シャロがその様子を廊下の角から覗いて見ている


「突然帰ってきてすまないね」

「いえ、ご主人様のご帰宅ならいつでも」

「シャーロットはいるかい?」

「はい。朝食後お部屋に戻られました」

 シャーロットの部屋に迷うことなく進んでいくクローム。その隣で数名の家政婦達が荷物を受け取りながら答えていく。コツコツと背後から聞こえてくる足音から逃げるようにシャロも迷うことなくお城の中を歩く。シャロがお城を出るよりも先にシャーロットの部屋の前に着いたクロームが数回扉をノックして部屋の扉を開けた

「おや、シャーロットは居ないのかい?」

 クロームがそう言うと、家政婦達が部屋の中に入りシャーロットを探す。ベッドの下や窓を開けて外を見たりクローゼットを開けて探してみてもシャーロットは見つからず、家政婦達が顔を見合わせる

「稽古に向かったのでしょうか?」

 そう家政婦達が話していると、クロームがシャーロットの部屋の前の廊下を歩き、城の壁を少し触った

「ところで魔術師達は?」

「皆で交代で結界を張っていると思います」

「そうか……」

 家政婦の返事を聞いて、少し険しい表情でシャーロットの部屋の前に戻ってくると、シャーロットを探すため部屋や周辺をバタバタと動き回る家政婦達を呼び止めた

「では、魔術師達に結界を解いて僕の部屋に集まるように伝えるように。どうやら意地悪な小鳥でも入ったようだ」

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