第14話 よめない代わりに
「シャロ、怒っているの?大丈夫?」
お風呂上がり、リリーから色々話を聞いたシャロがほんの少し不機嫌そうにソファーに座り、リリーがテキパキと手際よく用意した温かい紅茶をふぅ。と一息かけてゆっくりと一口飲んだ
「怒ってないよ。呆れているの、分かっていたなら教えてほしかった」
「わからなかったよ、もしかしたらって思ったの」
シャロの肩に止まりリリーが返事をする。二人の様子をソファーの後ろにある椅子に座ってシャーロットが見ている。ちらりと一瞬シャロが振り向きシャーロットを見ると、壁一面に積まれている沢山の本を指差した
「それ、読んでみてもらえる?」
「それってどれよ?」
「その青い表紙のやつ」
シャロがそう言いながら指差す先を見る。沢山の本に紛れ目的の本はシャーロットには見当たらず、仕方なく指差す先にある本の山をちょっとずつ移動していく
「もうちょっと綺麗に片付けても……」
文句を言いながら目的の青い本を探す。シャーロットの周りを応援のつもりでリリーがグルグルと飛び回り、シャロはのんびりと紅茶を飲みながら二人の様子を見ている
「見つけたわ。これね」
少し埃を被った青い本の表紙を軽く手で払って、表紙を見つめる。ただ真っ青で題名も名前も何も書かれていないその本に少し嫌悪感を感じつつも、本を開いてページをめくる。パラパラとページを流し見ても、書かれた内容はシャーロットには理解できずすぐに青い本を閉じた
「無理よ、私にはやっぱり難しすぎる。ちょっと読んでみてよ」
ソファーにいるシャロに本を差し出す。シャロは少しも目線を向けることなく買ってきたパンを一口食べる。今度はリリーに本を向けても、リリーもシャーロットを無視してシャロが食べるパンを盗もうと側でソワソワと動いている
「ああ。二人は読んだらダメなのね」
「書かれている文字は読めない?」
「読めるけれど、私は魔術を習っていないから、何の魔術か、何のための方式かが全く分からないのよ」
またパラパラとページをめくり本を流し見る。パンを食べ終えたシャロがその青い本をシャーロットから奪い取り、同じくパラパラとページをめくりはじめた。すぐに閉ざされた青い本は、シャロの手のひらの上で燃えて消えて無くなった
「……いいの?」
「良くはないけど、読めないなら仕方がない」
シャーロットに返事をしながら少し熱くなった手のひらをぎゅっと握り、テーブルにある買い物袋の中に入り、果物を探って取ろうとするリリーを見た
「リリー」
シャロが声をかけると夢中で果物を探していたのか驚いたリリーが一瞬体をビクッと動かした。羽根をバサバサと動かして袋から出ると、シャーロットの周りをグルリと一周して肩に乗った
「今日も一緒にお出掛けしなきゃだね今日もこれから忙しくなるよ」
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