作者様の意図と違っていたら恐縮なんですけど、どうしても真っ先にヘルシングを思い出しました。あれはアーカードという吸血鬼を父親から譲られたというか、譲られてしまった娘の話で、ヘルシングのインテグラは父から受け継いだ使命を果たそうとするんですけど、本作の主人公であるカレンとその父親との間にそれほど麗しい関係性はなく、そもそも正統な跡取りとも当然みなされ得ない立場ではあるのですが、にもかかわらず父の最大の資産であったであろうおじさんを結果的に引き継いだ形になる。
カレン物語がここから続くのかどうかはわからないんですけど、続くとすればそれはあの父の娘であることからの解放をかけた物語になるのでしょう。そして、その戦いの最大の武器は、父から受け継いだおじさんになるのでしょう。父の呪縛を乗り越えるための最大の味方が、父から(結果的に)譲り受けた悪魔であるという皮肉。インテグラの物語にとって父の存在感はそれほど大きなものではないんですが、カレンの物語にとって父との関係性は深い根を張り続ける。
「それでも生きていかざるを得ない」という章題が重くのしかかります。カレンは大きな力を得た。けれども、その力を与えられている事実そのものが、カレンの生の奥深くにある何かを規定している。
文章も端正で上品で、こういう作品に出合えると本当にうれしくなります。