第2話 女子高生のわたし、戦艦の艦長に… ②
う、う〜ん…
わたしは、一体…
確か、ペンダントが急に光りだして、光が強くなって、そして…意識を失った、んだよね?
周りを見てみると、100人くらいの人がわたしと同じ様に倒れている。
周りは…
何だか無機質な空間。冷たい金属の床がその現実をわたしに突きつける。
片方の壁に大きな窓?かな。外が見える。真っ暗。宇宙空間かな?時折チラチラと白い光が明滅してる。
何だろう、この感じ…。昔、社会科見学で行った記念艦の、あの無骨な内装を思い出させる。
「気がついた?よかった」
わたしの隣にはヒメカが立っていた。
さすがに…何も食べてない。
立ち上がり、もう一度周りを観察してみると、わたしと同じ様に、徐々に意識を取り戻す他の人達。
「ここ、どこ?」
「何があったの?確かシャトルで映画見てたはずだけど…」
「あれ?主人と、息子、息子がいないわ!」
ざわざわ、がやがや…
まぁ、わたしも他の人達も状況は一緒よね。
「み、皆さ〜ん!一先ず落ち着いてくださ〜い!こういう時はパニックが一番の敵ですぅ!」
あ、ナギサ先生だ。よかった。先生も一緒なんだ。
でも…
足が思いっきり内股になっててプルプルしてますけど!それ、先生がメッチャ動揺している時のポーズだから!説得力ないから!
「来た…」
ポソリとつぶやくヒメカ。
何が来たのよ?全く、この娘は昔からこんな感じなのよね。
「あれ、見て!私達の乗ってきたシャトルじゃない?」
「またまた、ってホントだ」
「え?じゃあ、ここは、何処なの?」
乗客の1人が外を指をさす。わたしも釣られて、目線をそちらに向けてみると、確かに外にはわたし達が今まで乗っていたシャトル『アークェット号』が浮遊していた。
「な、なに、あれ?」
他の乗客が別の方向を指さすと、そこには、超巨大なムカデの様な蟲が宇宙空間を飛んでいた。
次の瞬間、狙いを見つけたハンターの様にムカデはシャトルにその巨大な顎で噛み付く。
ギチギチと嫌な音を立て、シャトルの胴体が軋んでいく。
数秒後。バキッ!と金属が摩擦する嫌な音とともにシャトルが真っ二つに切り裂かれる。
機体の裂け目から投げ出される人々。その中には乗客の知り合いもいるかも知れない。
(あれっ!ウチの、制服!)
わたしは、投げ出された人々の中に、うちの制服を着た人を見つけてしまう。
そして、次の瞬間。
超高速で何かが飛来する。
「うそ、でしょ…」
飛来してきたのは巨大な蜂やトンボの様な蟲や小さな羽虫。
そして、それらは一様に、投げ出された人々に群がり、、、
『捕食』した。
!?
ウチの学校の生徒と、目が合った気がした。
でも
彼は一瞬で蟲に食べられてしまった。
込み上げて来るものがあり、口を押さえるわたし。
「き、きや〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!な、なにあれぇぇぇぇっっっ、む、むし!宇宙に蟲?ひ、ヒトが、きゃー〜〜〜〜〜〜!」
同様に、外を見ていたナギサ先生が叫び出してパニックを起こして走り出す。
緊張が爆発したナギサ先生を見て、逆に落ち着いてくるわたし。
ナギサちゃん、やっぱりパニックったわね…
外では引き続き投げ出された人々が次々と蟲に捕食されていく。
その様子を見ていた他の人々にもパニックが伝播していく。
「皆さん、落ち着いてください!落ち着いて!」
声を荒げる男性。あっ!あのダンディなオジサマ。
さすが、見た目通りの方だわ。
でも、落ち着いているのがオジサマだけじゃパニックはなかなか静まらない。
そんなパニックの中、ヒメカはわたしに、近づいて来る。
「呼んでる。ついてきて」
「な、何が呼んでるって言うの?」
ヒメカは時折、こんな風に突飛もないことを言う。わたしには慣れっこだけど…
「あなたを呼ぶのは『白銀の万能神』、急ごう」
わたしの返事の確認もせずに歩き出す星宮ヒメカ。
ん、もうっ!
ついていくしかないじゃない!
わたしは、ヒメカの後をついていくしかなかった。
スタスタと歩く星宮ヒメカ。
『急いで』と言う割には『遅い』。
歩くのが極々『遅い』。
そして、何も喋らない。
しびれを切らしたわたしは、問いつめる。
「どこに行くの?ハクギンノバンノウシンってなに?」
「あなたを呼んでる。待ってる」
答えに、なってない…
この『モード』に入っちゃったら昔からこんな感じなんだけど、よりによってこんな状況でだなんて。
通路を進むと、まるでわたし達を迎え入れるかのように照明が点いていく。
いくつかの隔壁を通過して他とは違う印象のドアの前に立つと、そのドアが開く。
その先は、まさしく、戦艦のブリッジのそれだった。
次の瞬間、光の粒子が集まり、ヒトの形を成していく。
銀の髪に、銀の瞳。少し、ぼやけた身体のシルエット。そこに現れたのは見るからにアンドロイドの様な美少女。
「はじめまして、マスター。ワタシはアリス・エスネア・スカーサハ。先ほど、56億7000万日の時間凍結保護処理から覚醒しました。製作者達に、『イルダーナ』と名付けられたこの艦の管理AIです。敵性勢力が迫っています。迎撃を」
アリス・エスネア・スカーサハと名乗ったアンドロイドの美少女は淡々とわたしに語りかける。
え?マスター?いるだーな?
へっ?56億7000万日?
はっ?迎撃?
わっ?わたしがっ?
与えられた状況と情報に頭が追いつかない…
この娘が言っている言葉の意味が、分からない…
「おい、どうなってやがる。戦艦のブリッジ、だと?」
げっ!?わたしの隣の席の酔っ払いのお姉さんだ。
確か、というか多分「孫麗玲」さん。
てか、何でここに?
わたし達の後、つけて来たのかな?
「…マスターの許可なくブリッジへの入室は基本的には厳罰ですが、今は緊急事態。不問とします」
アリスという娘が厳しい言葉を向ける。
「さあ、マスター。お席へ。この艦はアナタの意思で自由に動きます」
いや、お席にって…
促されるまま席に座ると、大事にしていた御守りが光だす。
「それこそが『リア・ファル』このイルダーナのマスターたる印」
え?
りあふぁる?
なに、たべられるの?
マスターは…なんとなくわかる気がする。
「さあ、マスター、敵の駆逐を!」
迫る蟲の群。
見てみると、シャトルも人も綺麗になくなっている…
食べられ、ちゃったの、みんな、なにもかも…
「さあ、マスター!ご命令を!」
そんな事、言われても!
何が何だか!
何をどうすればっ!
焦るわたし。
「四の五の言わないであの蟲の群れに1番でかい火力の武器をお見舞いしろ!」
あたふたするわたしに、壁に寄りかかりウイスキーを飲みながら酔っ払いお姉さんは檄を飛ばす。
「は、はいっ!アリスお願い!」
「畏まりました、マスター」
数秒後、ドゴンッ!ドゴンッ!と何が発射された。
それは、前方の蟲の群れを吹き飛ばす。
す、凄い、威力…
「先ずは由。アンタがやらないと全員、あの蟲どもに喰われるぞ、ま、精々頑張りな」
わたしは、右も左もわからないまま、戦艦を操り戦わなければならなくなっちゃった…
ど、どうなるの、わたし!?
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