第24話 ハニートラップ3

二〇二四年七月一六日 一六時三〇分


 「か、金田さん、なぜあんたがここに」

 「いやぁ、シンちゃん久しぶりだねぇ〜元気だった?動画配信見てたらさ、顔は隠してたけど、口調や話し方の癖がどこかで聞いたことあるなぁと思ったらやっぱりシンちゃんだったか」

 金田は進藤の背中を何度も叩き、再会を喜んでいるようだが表情は悪魔そのものであ、口角が大きくつり上がり進藤は初めて会った時と同じように再び萎縮してしまっている。

 「金田さん、知り合いだったんですか?」

 「ああ、この男はな、児童売春と児童ポルノの撮影と販売をしてたんだよ。でも俺と一緒に一晩星を見ながらキャンプをして立派に更生したんだよなぁ、今では立派な情報屋だよ。」

 進藤は冷や汗を滴りながらまた視線をあちこちに忙しなく動き回った。きっと今すぐにでもこの場を去りたいのだろう。しかしここはボックス席、金田が進藤を押し込む形で外側に座っているためテーブルと金田によって逃げたくても逃げられなくなっていた。

 「あの、ちょっとトイレに」

 苦肉の策なのか強引に席を立とうとするが

 「ここでしろ」

「大きい方なんで」

 「ここでしろ、それを今日のお前のキャンプ飯にする。」

 金田の顔はもう笑っていなかった。カナコも進藤の緊張が伝染したのか大きく唾を飲む。

 「金田さん本当に勘弁してください。本当にキャンプだけは許してください、あれから本当に何もやってないんですよ」

 進藤はすでに半泣きの状態だ。周りの客も不審な目で見始めている。

 金田はそんなこと一切気にせずただ黙ったまま進藤を眺める、進藤にとって永遠とも取れる時間が流れているのだろう。

 時計を見るとまだ五分しかっていない。それくらい、重い空気がこの席には漂っていた。

 「柊、続けろ」

 「はい?」

 「こいつから情報元を絞り出すんだろ。忘れたのか?」

 「あぁ、すみません。」

 「金田さんお願いします。それだけは勘弁してください。それを話したら俺、本当に人として生きていけなくなります。」

 金田は無視した。それが帰って不気味だった。

 「柊、とりあえず会計済ませてこい。そしてもう一回、過去の事件現場で聞き込みしてこい。俺はシンちゃんとキャンプ行って腹割って話してくるわ」

 そう言って一万円札をカナコに渡し、進藤の腕を掴み力づくで出口に引きずるように向かった。

 「わかりました!金田さん!わかりましたから!話します、話しますから!」

 「そうかそうか、星を見ながらゆっくり聞くよ。」

 そう言って、金田が署に戻ってきたのは翌日の夕方頃だった。

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