第9話 多摩川粉砕殺人事件3

金田は大きくため息をつき頭部の後ろを掻いた。

「まぁ、色々な視点は大事か、ヒイ、お前が殺し屋だとして効率的に身体を解体するのに使うならどんな道具を選ぶ?」

「そうですね。」

 カナコは顎に手をあてて考え込む。自分が殺人を犯したイメージは気分が良くないが、もっと効率よくやるのであれば、

「やっぱりチェーンソーですかね。」

「そうだ、でもこの切断面はどうだ。」

 カナコはさらにマジマジと見る。

 「チェーンソーだともう少し凹凸がありますよね。」

チェーンソーだと最初皮膚に刃をあてたときにすり潰したようなあとが残るような気がした。

 「この切断面、おそらく刀か鎌で切ったものだ、それもとんでもない力でな。そんな殺し屋は漫画でしか俺は知らない。」

 「じゃああれですかね、SNSで騒がしている怪物とか」

 「ああ、本当にそうかもしれないな。公安の連中もこそこそ動いているみたいだしな。」

 金田は眉間に皺を寄せて舌打ちをする。

 「また娘さんに顔が、怖いって言われますよ」

 「うるせぇ、もう諦めてる。」

 今年高校三年生になる一人娘がいるらしく、難しい年齢の子供との距離感にだいぶ苦戦しているようだ。

 そんな金田だが署内では一目置かれている叩き上げの捜査官だ。何よりもカナコが舌を巻くのが情報収集能力とそこから導き出す仮説だ。

 それにより数々の難事件を解決したきたと配属された時に同期会で話をきいた。

「とりあえず河川敷は島さん達に任せて俺達は聞き込みだな。」

「そうですね!」

 やっとこの悪臭漂う地獄から開放されると内心小躍りしていたカナコだが、視界の隅に違和感のあるものをとらえた。

 それは血とまわりに生えた雑草に紛れて分からなかったが若草色の小さな布の切れ端だった。

 それを丁寧にハンカチで包みポケットしまう。鑑識に提出してしまうと公安の連中に真っ先に持ってかれてしまうだろう、一度自分が回収して後で金田に相談する事にした。

 金田とカナコは河川敷をあとにして周辺の聞き込み調査を行ったが特に目立った収穫は得られなかった。

 元々ホームレスが集団で住み着いている場所など迷惑とは思うが日常の風景に溶け込んでしまうと関心など持つはずがない

 

 昨年七月頃から始まった連続惨殺事件。

 ちょうど梅雨の明けた代々木公園で発見された__はじまりだった。

 被害者は二〇代前半の女子大生だ。四肢を折られ身動きがとれない状態の遺体が全裸で発見された。死因は額の弾痕から銃殺されたと判断される

 そして八件全ての事件で目撃されたのが例の【赤い光を帯びた黒い影】だった。

 そして確実に数を増やしていったSNSでは「怪物だ」という噂が広がっていった。黒い影の写真が複数投稿されたことが事の発端っだった。

 ここまでわかっているのになぜ見つけることができないのか、カナコはもどかしさに日々ストレスを募らせていた。

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