第8話 多摩川粉砕殺人事件2
六
二〇二四年七月一一日 一一時三〇分
「全部?」
金田とカナコの声がはまもった。
カナコのいやおそらく金田もなんとなくは分かっていただろう。当たり一面を見回した。
バラバラ殺人という言葉では綺麗過ぎる、死体はかろうじて分かる上半身と下半身一部、かつて腕か足だったかもしれない肉片が血とともに飛び散っている。まるでホースで水遊びでもしたかのようなそんな有り様だった。
カナコは今朝食べたチーズトーストが逆流するのを必死で耐えつつ、被害者だったものを目で拾える限り、1つずつ確認していく。
よく見ると手首から肘にかけて、足首など大きい部位に関しては刃物できれいに切断されている。細かいものは雑に引きちぎられたようだ。どうりで異臭が酷いわけだ。
それに現場が川に近い事と気温がここ最近急激に上がった事、おまけにブルーシートで密閉されている事など様々な要因が重なって悪臭が拡散されていた。
「柊、何人目だ」
「八人目です。」
被害者は住所不定のホームレスで居住地のダンボールハウスに身元を証明するようなものは何一つ見つけられなかった。
現在鑑識の人数を増やして捜索しているが頭部は見つかっていない、原型が留められなくなるまで細かくされたのか持ち去られたのかは不明だ。よって歯の治療痕で追うことも出来ない。第一発見者のホームレスも害者の事をヒロさんと呼んでおり、フルネームは知らないと言うのだ。
「害者の死亡推定時刻は何時なんですか?」
カナコはこんな状態で時間など予測出来るわけがないと思いつつも中島に聞いた。
中島は「確証はないが、」と前置きをし。
「血の乾き具合や肉の変色具合から昨晩二〇時~二五時くらいだな。ただ気温の影響があるからもっとズレるかもな。
物や金銭も目的じゃないな、段ボールで作られた居住地の中も綺麗に残ってる。争った形跡もない。本当に惨たらしく殺しただけだ」
さすが中島だ、この状態でも大まかな予測をたてられている。
「俺は何かわからないんだ、外からくちゃくちゃ音がするから気になって、外に出たら赤い光と大きな黒い影が動くのが見えただけでなにもわからねぇ」
第一発見者の男からも大きな手がかりは見当たらなかったが。
「また黒い影か。」
「そうですねぇ、」
この連続殺人で共通するのは目撃者は揃って黒い影みたというが
それにしても臭い。この第一発見者の男、ホームレスにも関わらず肥満体型だ。何を食べたらここまで太れるのだろう。話す度に口臭とそして汗の臭い、現場の空気と混じり合い形容しがたいスゴイことになっていた。
(しぬ。)
カナコは手帳を開き頭にある単語を箇条書きにしてメモしていく。
バラバラ殺人
河川敷
ホームレス
「物取りでもなく金銭目的でもなく殺しただけ……」
カナコは呟く。
「金も物も取らず殺害目的だけでここまでやりますかね?」
「俺も長年刑事をやっているが今回みたいに執拗にバラしたのは初めてだな、それに見てみろ。」
金田は1つの肉塊に近づきしゃがみこんだ。カナコも続く。
「無理やり引き千切ったのと、綺麗に切断されてますね。」
「そうだ。人間の身体は意識がないと重いのは知っているな。そして人をバラバラにすることは難しいんだ。素人だとここまで綺麗な断面にはならない。」
「じゃあ殺し屋とか?」
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