第7話 相談事2

会話らしい会話はしていない、ミアは満足していた、久しぶりに話せたのももちろんだが、アヤナが独力で解決できない悩みとはどういうものなのか興味がわいてしまった。

 学校が終わり、ミアとアヤナは一緒に帰宅した。

 アヤナの荷物は学校鞄のほかに大きな紺色のボストンバックを持っている。どうやら自宅に戻ることもできずほぼ家出状態のようだ。、本当に急いで準備して逃げるように自宅を飛び出したのだろう。

 ミアは母にはしばらくアヤナを泊まらしてほしいとスマートフォンで連絡を入れたが快く承諾してくれた。

 「ミア本当にありがとう。正直いつ家に帰れるか分からないから、頼める人もいなくて」

 アヤナは口で感謝を述べつつ、本当に申し訳なさそうな苦い表情をしていた。いつも毅然とした彼女だが心身ともに疲弊しているように見えた。

 「全然大丈夫だけど。そういえばアヤナってお父さんの方のおばあちゃんいたでしょ。そっちはダメだったの?」

 「いや、そう言うわけじゃないんだけど」

 なんとも歯切れの悪い口調だ、これは順を追って話を聞く必要がある。今夜は長そうだ。

 「とりあえず、私の部屋で茶でも飲みながらゆっくりと話を聞くとするかねぇ」

 「ふっなにそれ。そのおばあちゃん口調は」

 アヤナは吹き出しながら静かに笑った。ミアは口角を必要に以上に吊り上げ彼女以上の笑顔を見せる。

 そうこう話しているうちに玄関からミアの部屋に到着した。

「どうぞー」

 アヤナを部屋に入れると目を丸くした。それはそうだろう。アヤナが以前に来たのが一年以上前だ。あの時と比べると明らかに女子高生の部屋とはかけ離れた内装になっている、部屋というよりは作業部屋か倉庫だ。

 「こんなに変わったのね、前に来た時はちゃんと女の子の部屋だったはずなのに。これじゃあまるでドラマとかで出てくる探偵の事務所だよ。」

 「やっぱり?私の仕事もだいぶ軌道に乗ってきたからね。」

 「youtuberだっけ私のイメージと全然違うよ。なんか夢のある仕事からかけ離れてる気がする。多分。」

 「まぁまぁ、私の最終的にやりたいことはフリーの記者だからね。Youtuberをやっているのもその準備だから」

 自分がどうして記者を目指しているのか、それは新聞記者として活動している父の影響が大きいだろう。そして現在の情報を発信するメディアは新聞、広告、雑誌、そしてSNSそしていかにたくさんの人の目に留まらせる方法を学ぶには自分が活動するためのトレーニングだ。

 ちょうどその時部屋の扉にノックする音が三回鳴った。

 「ミア、お茶持ってきたわよ。あらアヤちゃん。久しぶりね」

 「おばさん、お久しぶりです。今日は急なお願いにも関わらず泊まらせてもらってありがとうございます。」

 アヤナはが深く頭を下げた。母は笑いながら手を振り「いいのよ〜」と軽やかな声で言った。きっと昔からのミアの友達が来て嬉しいのだろう。

 母はミアに冷たい麦茶の入ったボトルとコップ、それとお菓子乗せたお盆を渡した。

 「よしでは本日のテーマについてお話しを聞こうじゃありませんか。」

 「ちょっと、ちゃかさないでよ、言っておくけど、本当に関わったら後戻りできないかもしれないんだがらね、分かってる?」

 「だいじょ〜ぶ。そもそも警察へ行かずに私の所に来るってことは私じゃなきゃいけない理由があるわけでしょ。」

 「まぁ、そうだけど」

 アヤナの言葉が詰まった。

 警察に相談できないこととはどんなことだろう。好奇心が、ワクワクが、ミアを堪らなく興奮させた。

 「私もね、軽く見えるかもしれないけど、自分が持った興味を持った事柄には誠実に対応するつもりではいるんだよ、ただ気を悪くするかもしれないけど、もしアヤナの悩んでる事が、私の興味ある事なら動画配信のネタにさせてもらうからそれだけは覚悟して欲しい」

 「……分かってる……。」

  どうやらアヤナはとっくにその覚悟はできているようだ、きっと連絡してきた時からミアのオモチャにされる可能性は考えていたのだろう。ミア特にそのことには触れず、ボトルからコップへ麦茶を注ぐ。

 「まぁまぁ、色々思うことはあるのかも知れないけど。」

 ミアは注いだ麦茶をアヤナに渡した。

 「話してごらんよ。何があったのかさ」

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