2.本の名前
6月 第1木曜日
こんにちは。
こんにちは。
本を返してください。
嫌です。本の名前を当ててみて。
『自省録』。これまた気難しい本ですね。
なーんだ。図書委員には敵わないな。読んだ事ある?
無いです。
私もない。
ふ・ざ・け・ん・な・よ。
ないものはない。
「読むための本」じゃないですか。
英語の和訳文みたいだね。
(そうかな?)
読んだ事ないの。読めたら読む。
そうですか。読まないんですね。
本は変えるかも。拘りがある訳じゃないから。
借りる本を?
返さない本を。
溜め息をついても良いですか?
呆れた?
でもいつか返すんですよね?
秋には?
疑問形ですか……。
そういえば本って「もと」とも読むよね。本の名前は言わば“もと”の名前……元の名前。せっかくだし『自省録』の原題クイズでもしようか。
急ですね。でも待って下さい。自省録って確かギリシャの五賢帝の誰かが書いた哲学書ですよね。ということは最低でも原題はギリシャ語ってことになりますよね。
うん。なりますよ。
無理ですって。
よし! 私の勝ち!!
先輩は知ってるんですか。
知らない。
ふ・ざ・け・ん・な・よ。
知らないものは知らない。今調べるよ。
別にあまり気にしてないですけど。
正解は『タ・エイス・ヘアウトン』でした。
汚名を返上させて下さい。
嫌です。私が本を返却してないのに君が汚名を返上しちゃったら私が非常識みたいになっちゃうじゃん。
? 冗談ですよね。
?
じゃ、じゃあ、名誉を挽回させて下さい。
嫌です。今度は私の元の名前を当ててみて。
……! えっと、それは……ブラックジョークですか。
ふふ。どちらかというと私の「ブラック常套句」。まぁ、いいや。じゃあね。
では。
図書室の扉が開いて閉まる。
記録カードには「坂本礼奈」と書いてある。
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