青すぎる春教室
大上 狼酔
1.自己紹介
5月 第5木曜日
初めまして。
初めまして。
ところでなんだけど。
はい。
私、まだ返していない本あるよね。
ありますね。2週間過ぎてますね。
正確には16日。2週間というよりかは2進数と呼ぶべきかもしれないね。
いつ返すんですか。
何か返す気が起きなくて。うーん。秋とか?
今6月ですよ。
知ってるよ。その上で、秋。
結局、いつ返却するんです?
あれ?韻踏んでる?
韻を踏んだつもりはありません。逃がさないようにあなたの陰は踏んでるかもしれないですけど。
それはそうと陰キャって良く考えられた響きだよねー。「かげきゃ」なんて言われたら萎えちゃう。
陽陰という言葉がありますから逆に安直では?
音読みと訓読みだね。ところでなんだけど。
はい。
君呼びで君を呼びたいんだよね。
あぁ。
名字教えて。
遠藤です。
下の名前は?
漆黒のペガサス。
えーと。
佑です。厨二病はアングラなんですか?
自分でふざけたくせに何を言っているの?
じゃあ。
?
さん呼びであなたを呼びたいんですよね。
ちょっと待って。私は訓と君を掛けるという、いわばライミングを挟む事で自己紹介というイベントを乗り越えた訳だよね。遠藤君も音読みの音と何かを掛けたらどうなの?
音と御とかですか?御呼びって……。帝か何かですか?
美少女ではあるね。
名前を教えてください。
直だね。安直だね。
いいですから。
私は早川礼奈。礼奈さんで良いよ。
涼宮じゃないんですね。
涼宮じゃないよ。逆に阿良木でも梓川でもないんだね。
阿良木でも梓川でも
じゃあ、私はこれで。
図書室の扉が開いて閉まった。
僕は陰キャみたく薄ら笑いを浮かべていた。最初から僕は彼女の名前を知っていたのに。僕が名簿で返却期限を探している姿を彼女は黙って見ていた。自己紹介を互いにしたのも全て建前である。
このような本音と建前の繰り返しが、これから始まる僕らの青春そのものだった。
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