一串の肉と、名も知らぬ異物
火のはぜる音と、肉の焼ける香りが、いつしか緊張を和らげていた。
グランは焚き火の前にどっかと座り、串を取ってかぶりつく。
「…美味いっ。これ、どこの肉だ? オーガじゃねえだろうな?」
「勝手に食べておいて何聞いてんのさ」
アマンダが肩をすくめる。
セトとグラフはその隣で物欲しげに見ていたが、アマンダは一瞥すらくれず串は分けられなかった。
「修行が足りん…」
「腹減ってんのに修行も何も…しかも、あいつだけ」
セトが小声でぐちる。
ミラは革袋から木の実をぽいぽいと口に運んでいた。
「あー、やっぱこれうまいね。サリオン、センスあるー」
「でしょ?って、聞きなさいよ!」
サリオンがわずかに怒りをこめるが、ミラはまるで気にしていなかった。
アマンダはその会話を聞きながら、ふっと肩の力を抜いた。
―おかしな奴ら―
でも、危険は感じない。 ただ、何かが違う。
オーガのハーフ、神官、グラスランナー、ダークエルフ、そしてハンター。
それぞれが、どこか“普通”じゃない。
でも、それが“異物”ではなく、“異種”として受け入れられる気がした。
そして、ぽつりと口にした。
「あんたたち、変わってるね…いくらギルドの奴らだからって、オーガのハーフなんて、初めて見たさね……」
「え、あーこいつは特殊っていうか…たまたま? 生まれたバケモンらしいから」
サリオンがあざけ笑うように言う。
「お前の方がバケモンだろ!」
グランが口いっぱいに肉をほおばったまま反論する。
「僕からしたら、全員バケモノだって…」
セトが肩をすくめた。
「いやいや、あんたも相当だよ」
ミラが木の実の種をセトに投げながら笑った。
サリオンの目だけが、焚き火の奥を見ていた。
空気の向こうにある、静けさに混じる違和感。
それは、匂いでも音でもない。
森の静けさに混じる、名も知らぬ気配…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます