四日目

午前中は映像チェックをしていた。

ところが、昨日撮ったはずのデータの一部が消えている。

消えた部分は、祠を撮った場面ばかりだ。

代わりに、撮った覚えのない映像が入っていた。


赤い屋根を真下から見上げるような映像。

ぐるぐるとカメラが回り、屋根の赤が画面いっぱいに広がっている。

そして、その赤がじわじわと暗く染まっていく。


「……こんなの撮ってない」

気持ち悪くなり、映像を切って外に出た。


廃墟の周りを歩くと、昨日まで無かったはずの小道が伸びている。

道の両脇には石灯籠が等間隔で並び、まるでどこかへ誘導するかのようだ。


試しに十歩ほど進むと、背後で廃墟の扉が勝手に閉まった音がした。

振り返ると、扉は開いている。

だが、その奥の間取りが、来た時と違っているように見えた。

窓の位置も壁の色も、昨日までの記憶と一致しない。


まるで廃墟そのものが、じわじわと形を変えていくようだった。


それでも俺はカメラを回し続けた。

何かが起きていることを、証拠として残すために。


——その時、背中越しに声がした。

「あと、三日」


振り返ったが、そこには誰もいなかった。

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