四日目
四日目の朝。
目が覚めた瞬間、体の芯まで冷えていることに気づいた。
寝袋の中なのに、まるで屋外で寝ていたような寒さだ。
廃墟の窓はすべて閉めてあったはずだが、床板の隙間から白い霧が入り込んでいた。
霧は床の上を這うように広がり、ゆっくりと消えていく。
「……冷気のせいで頭がぼーっとしてるのか」
自分にそう言い聞かせながらカメラを構える。
しかしレンズ越しに見た光景は違った。
床に霧の跡が残っており、それははっきりと“手形”の形をしていた。
子供の手のように小さく、指が五本。
それが無数に、寝ていた周りを囲むようについていた。
朝日が射し込んでも、その跡は消えない。
俺はカメラを止めずに二階へ上がり、昨日祠を見かけた部屋を覗く。
窓の外にあったはずの山の景色が、今日は真っ白な霧に覆われて何も見えない。
それでもシャッター音だけは、カメラを触っていないのに切り続けていた。
レンズは勝手に、何もない部屋の隅を繰り返し撮っている。
俺はその時、はっきりと自覚した。
ここから出られなくなるかもしれない——。
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