第53話 『魔力炉』
「そういやコアの『魔道具作成』で『魔力炉』とかいうヤツを作成できたよな」
ゴブリン・スミスの手先の器用さは指折り付きであり、折り紙でドラゴンを折ることも凹みの目立つ鉄製の胸当てをハンマー一つで綺麗に修復して見せた。
ならば他にもやらせてみたいと思うのが親心?だろう。
「大気中に漂うマナをエネルギーにして火を燃やし、鉄やガラスなんかを加工する道具っスね。それがどうしたんスか?」
基本的に宝箱の中に入れるような普通のダンジョンマスターにはあんま関係のない道具であり、未だ冒険者にダンジョンを発見されていない現状ではあまり注視してこなかった。
まあそれなりの価値を有しているがかなり重いので、気に食わない冒険者がきたときは宝箱に入れて嫌がらせをしてやろうと思って目を付けていた魔道具の1つだ。
「自分のトコで武器を作ればポイントや金の節約になると思ってだな。ひとまずゴブ造に任せて様子をみようと思うがお前はどう思う?」
「いんじゃねぇっスか?マナの満ちているダンジョンの中なら火力は思いのまま。腕さえあればどんな武器や防具もきっと作り放題っス」
「材料となる鉄も今までダメにしてきた武器や防具がいくつもあるからな。ダメになったからってすぐに捨てなくて良かったぜ。やっぱ前世の国にもあった、勿体ない精神ってのは大事だったってことだな」
「コアのインベントリ機能が無かったらすぐにでもゴミ屋敷……じゃなくて、ゴミの溜まり場になりそうな危険な発言っスね。オイラ嫌っスよ、何でもかんでもため込んでインベントリがゴミで埋め尽くされるなんてのは」
「分かってるって。だから時たま整理をしているだろ?ってか思ったんだけどさ、他のダンジョンでは武器とか自作してポイントの節約とかしないのか?ダンジョンなら冒険者の壊れた武器や防具なんて手に入りたい放題じゃん」
「普通のマスターなら召喚したモンスターにそんなことさせねぇっス。コアで武器を作り出した方が遥かに早く戦力を整えることができるっスからね。武器やモンスターも基本的には消耗品、マスターみたくモンスター1体1体をしっかり育てるってことはしないっス」
ダンジョンの防衛機構がきちんと機能し始めたらそういった数ポイントを気にしながら戦うなんてケチ臭いこともし無くなるのだろうが、今の貧弱な状態では節約に励まなければならないからな。
クロもオレの意見に賛同してくれたので、早速ポイントで『魔力炉』 を交換してゴブ造に渡すと興味津々と言った様子で観察し始め、≪等価交換≫で必要になりそうな道具一式を揃えて渡すとさっそく炉に火を入れて色々と試行錯誤をし始めた。
「コアで交換できる武器の中には火やら水やら属性攻撃を使える剣とかがあるけどさ、アレってゴブ造でも作れるかな?」
「ああいった武器は『マナタイト』っつう希少な特殊素材を武器に組み込むことで作ることが出来るっス。ただその合金技術は難しくて、並の鍛冶師じゃムリって話っス」
「そんじゃあさ、ゴブ造がこのまま成長して腕を上げ続けりゃあワンチャンいける可能性もあるってことか?」
「不可能とは言わないっスけど、マナタイトは高級品っスからね~。まあ、ここじゃあコアのポイントで簡単に交換出来るから、合金技術の習得も外の世界に比べりゃ多少は容易かもしれないっス」
コアの交換機能で検索してみると、マナタイトは確かにクロの言うようにそこそこ高いと感じられた。ただ高いものは今のオレでも手も足も出ないような価値であるが、安いものだとそれほどでもない。
高級品と低級品の違いをサクッと調べてみると、どうやらマナの純度が関係しているらしい。確かに見た目も高級品の方だと宝石のように透明感のある輝きを放っているが、低級品だとくすんだガラス玉のような濁りのある輝きのように感じられる。
「可能性がゼロじゃないならやらせてみるか。純度の低いマナタイトから練習を初めて、徐々に価値の高いものへと上げていこう」
「了解デス!全身全霊デ励ミマス!」
ゴブ造もヤル気は十分なようでなによりだ。
早速溶かした鉄をカンカンと叩き何かしらの加工を始めたので、邪魔をしては悪いからクロを連れて新しく作った『製造の間』から出ることにした。
私室へと戻りながら、ふと気になったことを聞いてみる。
「そういや、マナタイトってやっぱりマナの塊とかそういった類の代物なのか?」
「そうっス。大気中のマナが結晶化したものがマナタイトで、世界各地に鉱山があってそこから産出されるっス。ただ鉱山から産出されるマナタイトは3級品以下の低純度のマナタイトで、高純度のマナタイトはバカ強ぇモンスターの体内からしか入手できないっス」
「モンスターの体内から?」
「強ぇモンスターの体内でマナが長い年月をかけて精製され続けることで高純度のマナタイトが生まれるっス。古龍とか幻獣種の体内から摘出されるマナタイトの価値はダンジョンコアに匹敵するだけの価値があるっス!」
古龍から取れるマナタイトを使って一振りの剣を作れば、一体どれほどの破壊の効果をもたらすのだろうか。ワクワクとした気持ちがある一方、そんな超強力そうな武器を自分に向けられたらと思うと背筋が寒くなる思いもするな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます