第47話 レッド・オーガ
大金が手に入って気分が良くなったので、これまで後回しにしてきた分を取り戻す様に一気に合成をすることにした。
とは言っても、ウチのダンジョンにいるモンスターはゴブリン系統と少しばかりにスライムのみ。代り映えのしない合成風景を延々と眺めているのが億劫になったので気分転換に少し変わったことをすることに。
「ワ、私モ『合成』シテイタダケルノデスカ!?」
「おう。ゴブ助からの報告じゃあ訓練にも真剣に取り組んでいるらしいからな。それにお前にはちょっと任せたい仕事が合ってだな、その仕事の前払いの報酬だとでも思ってくれ」
訓練中だったオガ蔵を呼び出し、赤・ゴブリンと合成することでレッド・オーガへと進化させることにした。
いつものようにポチポチと画面を操作して『合成』のボタンをタッチ。いつものように黒い渦が2体を包み込み、渦が晴れたらオーガよりも少しガタイの良いレッド・オーガが出現した。
「コ、コレハ……何トイウ力ダ……!コレホドノ力サエアレバ……!!」
「おいおい、故郷を滅ぼした冒険者に対して復讐を止めろなんて眠たいことは言わねぇが、お前らのリーダーだったレッド・オーガもやられたんだろ?復讐はもう少し力を蓄えてからにしておきな」
「モ、申シ訳アリマセン!力ノ高マリニ感動シ、高慢ナ考エニナッテシマッテオリマシタ。シテ、私ニ任セタイ仕事トハ一体……?」
「最寄りの人間の町である『バインツ』から見て、ここのダンジョンは南側にある。バインツの北側でひと暴れしてきてもらいたいんだ」
「ナルホド、冒険者ヤ領主トカイウ支配者ノ目ヲ北側ニ向ケルコトガ狙イデスカ。デスガ、ナゼ私ナノデショウカ?強サデ言エバ、ゴブ助様ガ上デスシ、隠密性ヲ重視スルノデアレバ、ゴブリン・アサシンガ適任カト思ワレマスガ……」
「確かに単純な強さじゃ今のお前よりゴブ助の方が上だが、ダンジョンの外のことに関してはお前の方が上だと判断した。それにお前は冒険者にボロボロにされながらも長い間を生きながらえてきたという、何物にも代えがたい経験があるからな。お前の生存能力と危機回避能力の高さを見込んで今回の作戦を任せたい」
「ア、アリガトウゴザイマス!新参デアリナガラ、コレ程マデ高ク評価シテ下サルトハ……身命ヲ賭シテデモ、コノ任務ヲ果タス所存デアリマス!!」
「いや、身命を賭されたら困るぞ?生きて帰って貰いたいって思っているからお前に任せたんだからさ」
「ハッ!申シ訳アリマセン!!全身全霊デ挑ミタイト思イマス!」
流石にオガ蔵1体での遠征は厳しいだろうから、荷物を運搬する赤・ゴブリン2体と隠密に特化した能力を持つゴブリン・アサシンを2体、背負子に擬態したミミック・スライム2体を同行させることにした。
背負子の中身は食料品や救急キットや夜営グッズなどを中心にそろえ、いざと言う時の逃走用の煙幕、そして催涙スプレーなど役に立ちそうな物を詰め込んでいく。
準備が終わるころには事前に呼び出していたゴブリンたち……だけでなく、呼んでもいない他の個体も集合し、そしてそのゴブリンたちの視線がオレに一身に注がれており、何か言葉を発しなければならないような空気となっていた。
「あ~~……今回オガ蔵たちには特別な仕事を任せることにした。これはダンジョンの外に出て行わなければならない危険な仕事だ」
「「「
「お前らも知っているとは思うが、ダンジョンの外で死んでしまえば魂が回収できないのでコアで復活させることが出来ない。つまりは作戦の遂行に際して、万全の態勢が必要だ。だからこそこの仕事には新参ではあるがダンジョンの外で産まれ、ダンジョンの外で生活をしていたオガ蔵に指揮官を任せることにした」
「「「
「オガ蔵たちが無事に帰ってくれば、その外で活動したときの記録や経験などはダンジョンの運営にとってかけがえのないものになるだろう。そんなオガ蔵たちの健闘を祈って壮行会を開こうと思う!」
「「「
な~んか予定していなかった壮行会を開く、なんて威勢のいい言葉を思わず口にしてしまった。
この得も言われぬ高揚した空気に流されたことが原因だろう。そんな空気を作ったのは誰か?わざわざ調べずとも分かる。さっきから姿が見えないと思っていたら、まさか裏でこんなことをコソコソと計画していたとはな。
「よ~く聞けよお前ら、この壮行会はオイラの作戦のおかげで実行されたっス。つまりお前らは大きな大きな貸しができたということ。今度謝礼としてお菓子を献上するがよろしいっス!」
この計画力と実行力。仮にクロが反旗を翻した場合、アッサリと立場を追われる気がするな……まあ、そんなことはないとは思うが、食べ物が絡むときのクロの行動力だけはオレを上回っていると認めてやろう。
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