第46話 人の揚げ足を取る…

 ゴブ衛門の魂を意識しながらコアでゴブリン・アサルトを召喚すると、ゴブ衛門の意識を宿したゴブリン・アサルトが出現した。


「具合はどうだ?」


「問題、アリマセン。ゴブ助様モ、ゴ立派ニナラレタヨウデ……我ノ力ガ、多少ナリトモオ役ニ立テタヨウデ、何ヨリデス」


「ああ。お前の献身に感謝する。早速で悪いが訓練に付き合ってもらうぞ?マスターやクロ様をお守りするため、少しでも早くこの新しい身体に慣れねばならぬからな」


「勿論デス。微力デハアリマスガ全力ヲ尽クシマス!」


 デカくなったゴブ助用に新しい武器をポイントで鍛造して渡す。今まで使っていた両手剣じゃ持ち手の部分が少し短くて使い難そうだったからな。


 今のオレじゃあ持ちあげるだけで精いっぱいなほどの重量がある大きくて頑丈そうな両手剣を渡すと、片手で易々と持ち上げて、軽く振って具合を確かめていた。


「ありがとうございます。下賜されたこの剣に誓い、マスターをお守りいたします」


「お、おう……あまり無理しない程度に頑張れよ。お前に倒れられたらオレも困るからな」


 綺麗な姿勢でスッと一礼して、颯爽と2体のゴブリンが部屋から出て行った。


「何かアイツ進化して変わったなぁ…」


「そうっスか?いっつもあんな感じじゃないっスか?」


「いや、なんか言葉づかいにも拙さがなくなったし、昔よりも忠誠を誓っているようにも感じるんだが」


「まあ、元はただのゴブリンだったのにキングという上位種にまで育ててもらった恩義があるっスからね。人間で例えれば、貧民街の家なき子が王様にまで成り上がるようにサポートしてもらったようなもんっス。感謝しないわけがねぇってことっスよ」


「そんなもんか…」


「そんなもんっス。それより前から思ってたんスけど、どうしてマスターはゴブリン系統のモンスターばっか育ててるんスか?コボルトとかオークは召喚する予定はないんスか?」


「もちろんその予定はあるぞ。でもそれはもうちょい先にことになりそうだがな」


「ほうほう、それでいつ頃を予定しているんスか?」


「このダンジョンが人間に発見されたときだ」


「随分と先のことかつ限定的っスね~ちなみにその理由は?」


「ゴブリン系統ばかりが出現するダンジョンが人間に発見され、近くの町から冒険者のダンジョン攻略を助けるための支援物資が送られるとしよう。しかしその荷物を運ぶ隊商がモンスターに襲撃され、大切な荷物を全て奪われてしまい攻略に大きな支障が出てしまった。でもその襲撃犯がゴブリンではなくオークであったら、人間はその襲撃にダンジョンが関わっているとは思わないんじゃないか?」


「なるほど、少しでも攻略の足止めをするためっスか。でも、そこは別にダンジョン側の存在が関与しているってバレてもいいんじゃないっスか?どうせ人間とは敵対する立場にあるんスから」


「攻略中のダンジョンのマスターが知性のある存在だと知られたくないんだよ。ダンジョンマスターは知性のかけれもないモンスターからも選ばれるんだろ?だったらマスターが頭の悪い奴と思わせとけば、有利になる状況だってあるはずだからな」


「ふむふむ、敵に誤った情報を与えるってのは理にかなった戦法ではあるっスからね。ヒトの上げ足を取る方法にばかり頭を使っているマスターにはピッタリな作戦っス!」


「それって褒めているのか?」


「モチのロンっス!」


「まあ、お前はいっつもそんな感じか。それよりもそろそろ自動小銃を購入してゴブリンたちに射撃の訓練をさせるか……いや、それとも狙撃銃の訓練をさせて敵の指揮官を優先して排除させる作戦を取るべきか……ふぅむ、悩ましいな」


 とりあえず追加でゴブリンを何体か召喚し、大枚をはたいて購入した銃火器の訓練をしてみることにした。


 その過程で分かったこと。


 それはただのゴブリンの筋力では自動小銃の射撃時の反動によって狙った的に当たらないという悲しい現実であった。訓練を続けていけば……という淡い期待もあったが、火器が不足している現状においてはゴブリンの成長をのんびり待つこともできないからな……


 その後も検証を続けた結果ゴブリン・アーチャーが最初から的に当てるという成果を挙げたことで今後はゴブリン・アーチャーに銃火器の運用を任せることにした。


 希望が見えた……と言いたいが、今回購入した自動小銃と狙撃銃の2丁の購入価格が金貨200枚を超えていたことを踏まえて考えるに、本格的に運用できるようにまでなるにはまだまだ時間がかかりそうなことだけは確信できる悲しい実験結果に終わってしまった。

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