第31話 転生?
「ウグゥ……ココハ、ドコダ……?」
「……ふむ、どうやら実験は成功したみたいだな」
「オ前ハ……サッキノ人間?…………イヤ、ナゼ俺ハ生キテイル?」
「うんうん、分かるぞその気持ち。オレも車に轢かれて自分が死んだと思っていたら、いつの間にか復活していたって稀有な経験があるからな」
「何ヲ、言ッテ……」
「お前は俺のダンジョンのモンスターとして転生したってことだ。お前だってさっきから体が全然痛くないって不思議に思っているだろ?」
「転、生……?」
「ダンジョン内で生き物が死ぬとコアにマナが吸収されるんだが、吸収されるマナと一緒に魂の一部もコアに吸収されるんだ。んで、コアにマナを吸収された魂と同一のモンスターを即座に召喚すればその魂を宿す個体が召喚されるってのは何度か実験したんだが、全部ウチで召喚したモンスターだったんだ。でもさ、外のモンスターをダンジョンの中で殺して、同一のモンスターを召喚したらどうなるんだろってずっと疑問に思ってたんだ」
「……?」
「今まで会ったモンスターは人語を理解しすることが出来なかったから同一の個体かどうか判別できそうになかったんだが、お前は理解しているみたいだから、今回の実験体にさせてもらったという訳さ」
「………」
「まあ、色々とコアをいじったから出来るようになったんだけどな。この実験が上手くいったってことは、もしかしたらオレが殺されたとしてもその場所がダンジョン内であれば、コアさえ無事なら復活できるんじゃないかって思ってだな。今後のこともあるし実験せずにはいられなかったんだよ」
「スマナイ、話ガ見エテコナイノダガ……」
「まあ、いきなりこんな話されても訳わかんないよな……要約するとお前はオレの忠実な僕として生まれ変わったってことだ。感謝しろよ、運が良ければお前の故郷を滅ぼした憎き冒険者共に復讐できるかもしれないんだからな」
新しく傷のない綺麗な肉体を手に入れたものの、これまでの感覚と違う事で動きずらそうにオーガがゆっくりと上体を起こす。
傷だらけであった手足や胴体に痛みが無く、加えて潰れてしまったはずの片目がしっかりと見えていることで自分の身に不可思議なことが起きたことをゆっくりと認識し始めたようだ。
「俺ヲ、ドウスルツモリダ?」
「オレはダンジョンマスターだ。ダンジョンの主であるオレが望むことはただ1つ。ダンジョンの発展とコアを狙う冒険者共を返り討ちにしてやることだ!」
「……それじゃあ2つになっちゃうっス」
「いや、ダンジョンを守り抜きたいっていう意味では1つになんないかな?」
「ダメっス。カッコつけていいこと言った風を装っちゃいるけど、いつものダメダメでグダグダなマスターっス!」
「うぐっ!?」
「……コッチノ、小サナ生キ物ハ何ダ?」
「オイラはダンジョン精霊のクロっス。クロ様と呼び、崇め奉るがいいっス。そうすれば慈悲を与えてやらんこともないっスよ!」
いつものようにふんぞり返り、自分よりも立場が弱そうな相手にはすこぶる偉そうな態度をとっている。
オーガも怒ることも呆れることもなさそうなのは、小者に構うのが面倒なだけだろう。決して精霊と言う存在を恐れ敬っているわけではないはずだ。
「さて、新しい肉体を手に入れたばかりで不自由もあるだろう。しばらくはゆっくりとして……と言ってやりたいが、残念なことにウチのダンジョンにはあまり余裕が無くてな。いつでも戦えるように訓練を積んでいてくれ」
「……分カッタ。頭ノ中ヲ整理スル時間ガ欲シイカラナ。オ言葉ニ甘エテ身体ヲ動カシ、鍛錬ニ励ミナガラ考エヲマトメルコトニサセテモラオウ」
言うや否や、片膝を立ててゆっくりと立ち上がろうとするオーガ。う~む。すぐに動いてくれる態度は好ましいが、身体がダルそうでありながら、ここまで素直になられるとなんなく罪悪感が湧いてくるってのが人情だ。
「コホン。これからはオレの指示に従って動いてもらうわけだからな、齟齬とかがないように先に何か聞いておきたいことかはないか?」
「フム……ドウシテ、ダンジョンノモンスター達ガ外ニ出テ活動シテイタノダ?」
「このダンジョンの存在を人間に知られるわけにはいかないからな。これまでも近くに来た人間は、存在を知られる前に密かに消してきた。だがそうなるとダンジョンに敵が来ずに戦力の強化が難しくなるからな、ダンジョンから離れた場所でレベルアップに勤しんでいたってわけだ」
「ナルホド。確カニ人間ノ恐ロシサハソノ組織力ノ高サニアルカラ、納得ノイク答エダ」
「だろ?クロから聞いたんだけど他のマスターはそんな事せずに、ダンジョンが存在することをバンバン公表してドンドン冒険者を招き入れてジャンジャン肥やしにするんだってさ。戦力が整った後ならまだしも、今のウチのダンジョンだとA級以上の冒険者が複数人来ただけで相当マズイからな。慎重にさせてもらっているのさ」
「A級冒険者カ。俺デハ対処ガ難シイガ、足止メグライハシテミセル」
「嬉しいことを言ってくれるねぇ。ま、ポイントに余裕ができてお前さんが功績を上げりゃ、褒美に『合成』して強くしてやるからな、精いっぱい頑張れよ」
「……ソノ『合成』トハ何ナノダ?」
「おっと、そういや新参のお前は知らなかったな。マスターであるオレのスキル何だが……」
よく考えたら、このスキルをウチのダンジョンの関係者以外に対して説明するのは初めてだ。そもそも元とは言え部外者とこんなに話し込んだのも初めてかもしれない。
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