第28話 調査報告書
『フリード平原の調査中に消息不明となった冒険者についての調査報告書』
先日フリード平原の治安維持を目的とした調査に出たD級冒険者ヨルグ・ケーニヒ、マカロ・ニサンダラ、サウロン・アウスバーグの3名が出発後、調査期間を過ぎても帰還することがなかったため彼らの身に何らかの不幸に遭遇したものと判断し、新たに調査部隊を結成し現地へ派遣した。
両三名の足取りを追いつつ調査を進めると3日目の宿泊予定地に彼らの荷物を発見。
周囲を調べたところ何者かと戦闘の痕跡が見られ、ゴブリンの体毛などが残されていたことからゴブリンと接触し、突発的な戦闘があったことが推察される。
しかし彼らの実力はD級冒険者に恥じぬ実力があることは彼らと懇意にしている冒険者より証言が取れているため、単にゴブリンとの戦闘だけではない、何らかのアクシデントが発生したものと思われる。
また疑念は他にもあり、周辺を探索したが両三名の遺体を発見できなかったことも上げられる。
ゴブリンが人間の死体を食した可能性も否定できないが、彼らが身に纏っていた衣服までもが見当たらないというのも疑問が残る。人間が所持する品質の高い武器や防具をヒト型のモンスターが使用することは承知の事実であるが、衣服までもゴブリンが身に纏うことは考えにくい。
恐らくは衣服をはぎ取ることなくそのままの状態で別の場所まで移動されらたものと判断されるも、知能の低いゴブリンが食べ物をその場で食さず拠点などに移動してから食べる、というのも考えにくい。
恐らくはゴブリンを指揮する亜種、もしくは上位種がいたため統率の取れた動きをした可能性もある。
両三名の所持品を確認すると財布などを含む貴重品が見当たらなかった。調査隊よりも先に別の誰かが彼らの荷物を発見し、その中身を盗み出したものと思われる。
盗まれた物の中に両三名の調査記録が含まれていなかったことは不幸中の幸いである。
記録簿によると予想だにしていなかったであろうゴブリンとの戦闘以外は、やはり予定通り調査は進んでいたものと見られる。異変が感じられなかったが故に油断してしまい、ゴブリンの奇襲に遭遇してしまい敗北してしまった、とみるのがやはり妥当なところではる。
しかし後の調査隊にそういう風に思わせるために、誰かが別の思惑によってそのような工作をした可能性も否定はできない。
例えば調査の最中、両三名は見てはいけないものを見てしまった。その口封じのために殺され、両三名の身体は人間との戦闘の痕跡を隠匿するために持ち帰られゴブリンの体毛など偽の証拠を用意した、と考えることもできるだろう。
その際の最も可能性の高い犯人とすればやはり近年になって一層の覇権主義を強め、周辺諸国に対して圧力を強めている帝国の工作員と考えることが有力な説だと判断得ざるを得ないだろう。
我ら冒険者ギルドは基本的には国家間の争いに介入することはない。
だが、ギルドの構成員を殺されて黙っていられるほどの慈善的な団体でもない。帝国の動き、そして王国の動きにも細心の注意を払うのが最善かと思われる。
以上で本調査の記録を終える。追って質問のある場合は本調査の責任者であるラザエルにまで願いたい。
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