第6話
当日、保安検査所を抜けた搭乗ゲートの前で待ち合わせすることになった。
万が一、和政のファンの人に見られたら大変だからっていう理由。
和政のファンはギャラスタのファンの中でも過激というか、特殊な人が多くて、和政はよく事務所の人と対策について話したりしている。
かっこよすぎるもんね……。
いや、他のメンバーがかっこよくないってわけじゃ、もちろんない。
ただ和政がずば抜けてしまってるというだけだ。
搭乗ゲートの椅子のあたりを探すと、座って帽子を被り、サングラスをかけた和政を見つけて、私はシレッと隣に座り、和政の手に触れた。
チラッと私を確認すると、嬉しそうに笑って、私の手を握ってくれる。
「迎えに行けなくて本当にごめん」
「ううん、全然。
密会みたいでドキドキしちゃった。
こういうのも、楽しいね」
そもそも和政と飛行機に乗るのって、高校時代の修学旅行以来な気がする。
変に浮かれてしまう私を見て、私の握ってくれてる手を優しく撫でた。
「詩織、その服新しいね。わざわざ買ってくれたの?」
「そう、この間結奈と買い物に行ったときに。
浮かれて色々お買い物しちゃった」
飛行機は和政がビジネスクラスを取ってくれた。初めて乗る。
なんだか、足の前が広い気がするし椅子もふかふかな気がした。
「詩織窓際に行ったら?」
「あ、でも……。
通路側のほうが人通りあるし、バレるリスク上がっちゃうから、和政が奥のほうがいいと思う」
耳元でコソッと伝えると、一瞬眉間にシワを寄せてから、不満そうに小さく頷く。
「ごめん、ほんと」
「ぜんぜん!
むしろ私、早起きして眠いから、せっかく窓際でも景色楽しめないし。
3時間くらいだよね?朝、向こうの天気確認したら晴れみたい!プール入れそうだね」
和政と話して、ランチは空港で済ませたら、そのまますぐヴィラに行って、プールに入ろうと話してた。
着いたところの近くに地元の人も使うスーパーがあるらしく、そこで食材を買って、夕食を一緒に作る予定。
きっと売ってる食材がこっちとは違うだろうな、と思って、事前に色々調べるのが本当に楽しかった。
もし売ってたら、ソースやお酒や乾き物も、お土産に買いたい。
和政と料理する時間、私は本当に大好き。
付き合い始めた、高校時代を思い出すから。
私たちは高校の調理部で出会って親しくなった。
もう高校を卒業して3年以上経つけど、結局あの、毎日和政と過ごせてた時間ってとても楽しかったなと思う。
周りの目も気にせずに、まっすぐ見つめ合ってた頃。
だけど、今みたいに少し不自由なのも、それはそれで私は悪くないと思ってる。
……和政はいつもすごく申し訳なさそうにしてるけど。
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