第4話

〜詩織side〜



和政と旅行に、数年ぶりに行くにあたって、私は一つだけ、少し気になってることがある。



和政って、もう私に性欲湧かなくなってしまったのだろうか。



私の質問に、一緒に買い物に付き合ってくれていた高校時代の同級生の結奈ゆなはびっくりしたように絶句した。



「……まさか詩織から、そんな相談受ける日が来るとは思わなかったよ」


「ごめん。水着買うのに付き合わせた挙句、こんな下世話な相談で……」



ただ、私にとってはかなり切実な悩みで、誰に相談したら良いか分からなかった。


結奈は和政と同じバンドのベースのカクちゃんと交際していて、和政のことももちろんよく知っている。


それに恋人のカクちゃんとも同棲してるから、環境が似てるし、同じバンドメンバーと交際してる同志みたいなところがあるので、一番相談しやすい。


結奈は私の相談を絶対、変にからかったりしないし。



「水着は私も欲しかったし、ちょうど実習終わって暇だったから全然。


むしろ、そんな感じなの?二人は永遠に激アツラブラブなイメージがあったから意外なんだけど」


「えっと、……多分そのイメージはそんなに間違ってないし、変わってないと思うんだけど、……」


夕食を予約していたレストランに着き、私は結奈に奥に座るよう促す。

結奈もお酒が好きなので、二人でレモンサワーを一杯目に頼んだ。



「あの、本当、茶化さないで聞いてほしいの」


「うん、大丈夫。詩織が大澤のことで悩むなんて、なかなかないもんね。

真剣に聞くし、私も正直に答えるよ」



店員さんにもあまり聞かれたくなかったので、個室の店を元々選んでいた。

先に一通り食事を注文し、来たレモンサワーを3口ほど飲んで覚悟を決めた。



「もう、かれこれ3カ月は和政と、そういうことしてないと思う」


「……絶妙なライン」


「しかもその時も、多分和政、最後まで出来てない」



正直あまり分からない。私は気持ちよかったし、幸せだし、満たされたから。


だけど、終わったあとの雰囲気とか所作とか思い返すと、多分私がそうなったタイミングでやめた気がする。



「週1、2回しか会えないのに、その会えた時もご飯食べておしゃべりして、お酒飲んで映画見て終わり、みたいなのってどう思う?」


「他のことはするの?ほら、キスとか」



大きく頷くと、結奈は納得したように手元にあったレモンサワーを飲み終える。

そして、店員さんを呼んで、私の分も合わせて2つ頼んでくれた。



「正直キスの回数はかなり多い方だと思う。


とゆうかむしろ、どうしてあんなにキスしたりハグしたり触ってくるのに、そういうことにならないのか不思議なくらい」



そう。

大切にされてるのはとても伝わってくる。


今回の旅行だって、まだ自分の休みが決まってもないのに、あんなに高級なリゾート地や飛行機を押さえておくって、正直私の周りでも和政以外聞いたことがない。


それに一緒にいる時も、必ず手や頬に触れてくれたり、私のことを愛おしそうに見つめてくれる。



そこに不満は本当に一つもない。



「和政から愛情はすごく感じる分、不思議というか不安で……」


「たしかにそれは不安かも……。

……でも大澤って、詩織への愛が規格外というか、ちょっと大きすぎるとこあるし、通常の物差しでは測れないというか、」



結奈が照れないように頑張ってくれてるのが、表情から伝わる。

私は運ばれてきた大葉とクリームチーズのおつまみを口に運び、結奈が頼んでくれた二杯目のレモンサワーを半分一気に飲んだ。



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