第3話

二人でゆっくり食事しながらワインを飲んでいたら、あっという間に一本なくなってしまう。


「あ、どうする?

俺、もう一本開けても飲みきれると思うけど、詩織明日早いっけ?」



俺も詩織も、比較的アルコールは強いし好きだ。料理がそもそも好きなので、それに影響されて色々飲むようになった。


詩織は少し悩んでから、スマホでシフトを記載してるアプリを確認する。



「明日は遅番で午後からだから、大丈夫だよ。ボトルまだあったかな?」


「あ、いいよ、俺が取りに行くから」



席を立ち、もう一度寝室に向かう俺の手を詩織が優しく握った。


「一緒に選ぶ?」


「あれ?詩織、少し酔っぱらってる?

やっぱり今日はやめとく?」



詩織は酔っ払うと、やたら色っぽくなる。

多くの女性がそうだと知り合いの諸先輩方には言われるが、詩織はレベルが違う気がする。


まあ、俺が詩織を好きすぎて、そう感じるだけな気もするけど。


でも、この酔っ払い詩織の誘惑に乗っかってはだめだ。



「ううん、全然まだ酔ってないよ」



たしかに、詩織はワイン半分くらいでは酔わない。


俺は体調が心配になって、詩織の額に手を当てた。



「……熱はなさそう。

体調あまり良くない?お腹痛い日だったりする?」


「ううん、先週おわった」


「そっか。

でもごめん、心配だから今日は飲むのはやめとこう」



覗き込んで心配して伝えると、詩織は少し迷ってから小さく頷いた。


俺はキッチンの冷蔵庫から炭酸水を取り出し、氷と一緒に入れる。



「それでさ、詩織。帰りにラインした件!

8月12、13日って俺も休みだった!


元々、詩織が休みを教えてくれた時に予約しておいたヴィラがあるから、久しぶりに二人で旅行しない?」


「うん!私もすごく楽しみ!

……でも、調べたらそのホテル、すごく高価だったよね?もう少しグレード下げないと私、半分出せないかも……、ごめんね?」



詩織が申し訳なさそうに、両手でグラスを持って俺の入れた炭酸を飲む。

最初何言ってるのか分からなくて、少し悩んでから、俺も炭酸水を飲んだ。



「え、ごめん、詩織にお金出させる気は全くなかったけど。


そもそも俺が勝手に予約しておいて、半分出してって結構やばいやつじゃない?」


「え?!和政って、そんなに大金持ちになってたの?」



おおがねもち、というワードがなんだか面白くて少し笑ってしまう。



「さすがに今回の旅行に関しては予約した時からそれ用に、余裕持って貯めてたよ。


しかも!このヴィラ、庭にプールついてるし!泳いじゃう?」


詩織は俺のハイテンションに少し驚いてから、ワンテンポ遅れて頷いた。


そして、改めてキラキラと笑ってくれる。



「そしたら私、水着買わないと」


「たしかに。詩織とプールって1回も行ったことないよね。俺も新しいの買おうかな」



まあプールに行ったことないのは俺が連れて行ってないからなんだけどね。


詩織の水着姿をこの世の男に晒すとか、危なすぎて気が気じゃなくなる。



「1ヶ月前なのに準備すること多くて申し訳ないけど、二人で色々計画しようね」


「うんっ!楽しみ、ありがとね、和政」



詩織はそう笑って、まだ少しだけ残っていたサラダを食べきった。





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