僕、図書館に行く

高田金安

1話だけ

 この土地には昔からが住み着いている。


 本に書いてあったことによれば、おじいちゃん、ひいおじいちゃんが生きていた時代からいたらしい。


 僕らは毎日、その怪物たち怯えて生きている。


 でも、僕は少しでも長生きしたいから、毎日怪物のいる外へ命がけで図書館に出かける。そして知識を蓄えて、生きるすべを身に着けるのだ。


 今日も外では女性たちが子どもたちに食べ物を用意するために必死に取りに行っている。

 彼女たちは怪物から食べ物を取ろうとするから、そりゃ襲われるに決まっている。でも、僕たち男性はあそこまで好戦的ではないのに襲われる。きっと怪物にとっては性別なんてないのだろう。


 僕も図書館に行くために羽を広げて、飛び立つ。


「パーーーン!」


 手を勢いよく叩く音が響き渡る。


「よし、蚊を仕留めた!」


「ここら辺、めちゃくちゃ蚊いない?」


「うーん、そうだな。虫よけスプレーでも吹きかけとくか」


 怪物のてのひらの上でそんな会話が聞こえた気がした。死の間際の幻聴に違いない。意識がだんだん遠のいていく。僕は悔しさを抱きながら目をゆっくり閉じた。

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僕、図書館に行く 高田金安 @Hukurokaburi

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