第二十一話 行くか行かぬか
「やはり今回は見合わせた方がよろしいのでは?」
やんわりとした助言のような言葉だが、そこには有無を言わせぬ強さがあった。エルファンスは国王を隣国へ行かせたくないのだ。
「招待された国ん中がちょっとばかり騒がしいからって、尻尾巻いて逃げ出すかよ。大体行けって言ったのはお前の方だろうが」
口を
かたや宰相のエルファンスは、言い聞かせるような穏やかな声で。
「それは半月前の話です。現在は、小さいとはいえテロが続いたのですから、今ラガマイア王国に行くのはお勧めしません」
「あー、はいはい、それでアレだ。世界中から『ヴィリアインの臆病者』とか言われるワケだ」
むくれた顔でそう言って、今度は机に頬杖をついた。
「危険を回避する選択は臆病とは申しません。実に勇気ある行動です」
駄々をこねるオクトゥビアを、エルファンスは更に諭す。が、王の眉間の皺はますます深くなるばかり。
「他の奴らが行って俺だけ欠席なんて、ありえねぇ。さっさと手配しないと俺ひとりで勝手に行くからな」
「またそのような事を……」
頑として聞く耳を持たない国王に、いよいよ宰相も困り顔になる。こうなるともう説得が効かないことは経験上良くわかっていた。彼や護衛たちの制止を物理的に振り切って、ひとりイオマ──馬とラクダを合わせたような乗り物──にまたがってでも隣国へ向かうだろう。
しばし考え込んだ後、エルファンスは大きくため息をついた。
「わかりました。その代わり私も同行しますよ。それと、滞在中は勝手に街中に出たりはなさいませぬよう」
「あー、わかったわかった。俺だってお前に小うるさく言われながら酒を飲みたくはねぇからな」
一転上機嫌になったオクトゥビアは、がはは、と大きな肩を揺らし白い歯を見せた。
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