第4話 ガタガタ橋
家の前には小さな板橋があった。峠を越えて隣町に行くには、その橋を渡らなければならなかった。
ある夜のこと床に就いていると、ガタガタと橋を渡る音が聞こえてきた。その上ガタガタという音に混じって、ひそひそと人が話す声もした。しかし、こんな夜中に誰が峠を越えるのだろうと不審に思った。
嫌だなと、びくびくしながら外を覗いてみると、誰の姿も見えなかった。
私は訝しがりながら、薄暗闇の中に目を凝らした。やっぱり誰もいない。私はしばらく外を見張っていた。が、幾ら待っても橋を渡る者は現れなかった。
私は仕方なく、また眠りに就いた。次の日も夜中になると橋をガタガタと渡る音がして、人の話す声が聞こえた。
一体何と言っているのか分からない。ただ何人もの人がしゃべっているのだった。
こんな夜中に橋を渡るなんて、酷く不気味だった。私は飛び起きて、急いで外を確認した。が、外には誰もおらず、橋を渡る者はいなかった。
おかしな事もあるものだと、私は首をひねって布団に潜った。
それからもその奇妙なことは続いた。ある雨の日には橋を渡る音に加えて、人のすすり泣くような声まで聞こえてきた。
雨が誰かの涙のように思えた。しくしく泣いてとても悲しそうだった。それでも外を確かめてみると、人の影どころか獣一匹見えなかった。
それが毎日のように起きるので薄気味悪く思った私は、思い切って占い師に事の全てを相談した。
すると占い師は、あなたの家の前の道は隣町を越えて越中立山まで続いている。立山には様々な地獄があるので、その地獄へ落ちる亡者たちが橋を渡っているのだと言った。
それを聞いて、私は家族と一緒に橋の側から急いで引っ越すことに決めた。
それから亡者たちを供養するために、橋の近くに経塚を立てることにした。
すると以来、あんなに毎晩続いていた怪異は、ぴたりと止んだという。
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