第2章 二人の姿と悩み事
「ギリギリ……間に……合った……」
息を切らして朝ごはんのホールに三人で到着する。置かれた時計は七時五十八分だから本当にギリギリセーフだ。
「あ、ところで
入場表にチェックをつけた所で先生に声をかけられる。
えっ〜と風理って事はみなみか。これでも学年の学級委員長だしね!
「わかりました。
二人は先に食べてて。」
さっきより真面目な表情のみなみにシェルと声をそろえてお返事する。
「「りょーかい!」」
二人で窓側の席を確保して、一息つく。
さて、ここで大きな問題がある。それは、席とりのために誰が残るか、だ。大体こういうビュッフェの時はみなみが待っててくれたんだけど今は無理だし…
よーし、こういう時は!
意気揚々とシェルの方を向くと同じタイミングで目が合う。
考えてる事は同じみたいで、せぇので利き手を出す。
「じゃんけんぽん!」
私はパー。シェルはチョキ。
負けちゃったぁ…
「わ〜い、勝っちゃった☆
マリン、何食べたい?」
ちなみにこれは動く人が待ってる人の分も取ってくるルール。でもやっぱり自分で選んで取るのが楽しいから、私もシェルも残りたくないんだよね。
今にも踊り出しそうなシェルに私は伝える。 「え〜っと……
ローストビーフと木の実ベーグルとフルーツクリームパンケーキと……あ、あとハッシュブラウンとりんごジュースとスモークサーモンのマリネと……オニオンスープとサクサクコロッケと……」
「ちょっとマリン、ストップ。
それ、全部?」
なんでそんな事聞くんだろう。もちろん食べたいから言っているのに……
「うん!別に一つ一つの量は少なめだし、全部ちゃんと食べるよ!」
私がそう目を輝かせて頷くと、シェルは呆れたようなため息と共に口を開く。
「はぁ……まぁマリンの食欲は昔から知ってるけどぉ……!とりあえず、それだと持ってくるシェルが大変だし。仕方ない、マリンが行っていいよ。
代わりにシェルのスフレパンケーキとフルーツサラダと冷たいココア、持ってきてね!」
シェルも私も、あんまり食べる量変わらない気がするけどなぁ…
まぁ、自分のを持ってくるのは楽しい。他にも美味しそうな物があったら、それも取れるし。でも……
「二人分持ってると、私が食いしん坊みたいじゃん!」
「大丈夫、どうせそこまで変わらないから☆」
えー?そうかなぁ……そんな事ない気がするな…
シェルの意味不明な理論に見送られ、とりあえず食べ物を取りに行く。
まずは入り口近くのパンとかおかずとか、スープのエリア!
目的のベーグルとかを探すと、見慣れた黒と青の中間のサイドテールが目に入る。
あ、みなみがまだ先生達と話してる。確かみなみは「海の合宿実行委員」にも入ってて、四年の委員長の次に偉い「海の合宿福実行委員長」だったけ。
やっぱり、すごいな。
私は先輩や他のクラスの担任の先生とかと会うと緊張しちゃってあんなハキハキ喋れないし、どちらかというとぼんやりしてるタイプだからみんなをまとめるのとか、絶対ムリだからな……
よし、とりあえずこのエリアのは取り終わったから次はスイーツエリア!
途中でシーザーサラダとブルーベリーヨーグルトと揚げたてのフライドポテトがあったから取りながら私達の席が近くへと向かう。
「シェルちゃんすごいー!それ、本当に自分で作れたの!?」
「うんっ!教えてもらったら思ったより簡単だったよぉ〜、るーちゃんもきっと作れるよ!」
「そうかなぁ……でもシェルちゃんが教えてくれたら心強いかも!
私ね、実は くんにプレゼントしたくて……」
「え、るーちゃんなら絶対上手く作れるって!オススメのレシピ本、貸すよ!」
「本当に!?シェルちゃん優しい〜!ありがとう〜!」
シェルが楽しげに談笑してるのが目に留まる。あれって違うクラスの子じゃ……シェルのコミュニケーション能力恐るべし……
もちろん、シェルもすごい。
天使レベルでめちゃくちゃ可愛いし、どんな子でも話しやすいから男子にも人気だとか……
いつも私と一緒に行動してくれる二人だけど、幼馴染ってだけでこんなすごい人達と一緒にいていいのか心配になってくるよ……
可愛くているだけで華やかなシェルと綺麗でしっかり者のみなみなら部屋とか行動班とか、誰とでも組めたはずなのにな……
なんて考えてる内にシェルのスフレパンケーキが出来上がったみたい。直接目の前で作ってくれるシステムだから時間かかるかと思ったけど早かった。プロの方ってすごい!
さて、これで終わりだけど、さっきの様子じゃ……やっぱりまだ話しこんでいる。割り込んでいくのは申し訳ないし、そんな勇気ないし、どうしよう……?
「おーい、マリンー!
そろそろ取り終わったぁ〜?」
な、なんてナイスタイミング!流石クラスの人気者兼私の大親友!
「今ちょうど終わったよー!」
いっぱいあるけどワゴン形式のビュッフェで助かった。食べ物を落とさないように慎重に向かう。
「じゃあシェルちゃん、またあとでね!」
「うんっ!お互い楽しもうね!」
シェルが友達と別れ、私が席に落ち着くと見計らったようなタイミングでみなみがやって来る。
「私も今終わったから。早く食べちゃいましょ」
そう言っても、彼女はトレイもワゴンも持ってない。
「ふぃにゃみ、ふぁさごふぁんは?」
「口を空にしてから話しなさい。」
厳しい指摘だ。急いでローストビーフを飲み込むと、再チャレンジする。
「みなみ、朝ごはんは?」
「大丈夫。ちゃんと考えてるから。」
そっか……まだ考え中なのか……
みなみが考えてる間にポテトにコロッケとベーグル、パンケーキを平らげる。
うっ……まだ半分もいってない……食べ切れるかな……?
思ったより量が多かった、ような気がする。
「マリン、少し私が貰おうか?」
「み、みなみぃ〜!
ありがとう〜!サラダとスープとベーグルをお願いできる?」
「マリン、ありがとうってどうゆー事〜?」
ニヤニヤするシェルにハッとする。
しまった、せっかくみなみが助け船を出してくれたのにこれじゃあ食べきれない所なのがバレてしまう。
「ま、こうなるのはわかりきった事でしょ」
「みなみぃ〜!それは大ダメージすぎるよ……信じてたのに……
でも、ありがとう!」
「無駄にはしたくないでしょ。
このままだと船を出るのも遅くなるよ。」
っん!?それ本気!?
思わずハッシュブラウンを喉に詰まらせるとこだったよ……
それで私達は急いで食べ始めた。
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