第1章 夜明けの予感
太陽が水平線から海をあたたかく染めている。
風に揺られてさっき結んだばかりのピンクのおさげがバサバサ騒ぐ。
やっぱり切っちゃえばよかったな~ってダメダメ!かみを一週間切らないのはおまじないの大切な所なんだから!
私・海風マリンは「大切なことを思い出すおまじない」をやろうとしている。思い出したい大切な事は妹・マリエの誕生日プレゼントの場所。貯めたお小遣いで買ったはずなんだけどどこに置いたか忘れちゃって...。あと一週間しかないのにどうしよー!?ってなってる時にたまたまこのおまじないを聞いたんだ。
このおまじないは四つの条件を守ることで成立するらしい。その条件は、「海の見える所で十五分間一週間かみを切らない状態で朝しか見れない景色を見る」事だ。ということで船の上で朝焼けを見てるんだ〜えっと、今が五時三十二分だから…..あと六分も待ってなくちゃいけないのか~ひまだな~
ふと置かれていたガラステーブルを見ると不安げなマリンブルーの瞳が反射している。
これじゃあダメだな〜。いくら怪しいおまじないでもじてないと叶うものも叶わないんだから。
はぁ~ひまだな~
って、またさっきの思考に戻ってるなんて。
まだ寝起きで頭がぼんやりしてるみたいだし、少し状況を整理しよう。
私は今小学校のイベントで参加自由の「海の合宿」に参加してて....夜に始まるし、先生たち以外の大人がいない環境でのワクワクの合宿だから参加可能の生徒(小三以上)がほぼみんなが参加してるんだっけ。
ワイ島の私達の住んでる街からは船で十時間ぐらいかかるから寝てる間に移動しようって事で夜からだったらしい。
ふぁ~。そんな事考えてたらまた眠くなってきちゃったよ。海の合宿のしおりには「寝る」って書いてあった時間も、みんな揃ったらおしゃべりしたくなるもんね。
つまり、ぜんぜん寝れてない。
朝の二時くらいまで起きてたもん。たったの三時間すいみんだよ~
マリエのプレゼントを見つけるためとはいえ、目覚ましなしでこんな早起きできた自分が誇らしい。
あ、もう三十八分..時間か....ふぁ~….
「⬛︎なーー!⬛︎らーー!本の続き、考えたよーー!」
……ん〜?誰かに呼ばれてるような……?
どうせ夢かぁ〜
「……ー!、マリンー!起きてーっ!」
ん?シェルの声?
「早く起きないと朝ごはん、間に合わないわよ」
えっ!?朝ごはん!?
わたしはびっくりして飛び起きる。
「ほら、こうすれば起きるって言ったでしょ」
って起こすためかぁ……
次第に定まっていく視界のなかで誇らしげに微笑んでいるのは私の親友、みなみ。
「シェルがた〜くさん呼んでも起きなかったのにぃー!
マリンったらひどいっ!」
もう一人の親友、シェルがぷくっとあざと可愛く頬を膨らます。そんなシェルをみなみがなだめる。いつも通りだ。
いや、いつも通りのはずなんだけど……なんか違和感を感じて、まだぼんやりしてる頭を強制労働させる。
う〜ん、おまじないをしたから?でもまだ何も思い出してないし……
あっ!そういえば!
「なんか、すごく、不思議な夢を見てた気がする……」
思わず口に出してしまったけど、思い出せた。
「ねぇねぇ、それってどんな夢?
動物さんとのお茶会とか〜?」
「いや、マリンの事だからいつもみたいに豪華なご飯の夢とかでしょ」
シェルが言うほどメルヘンチックじゃなかった気がするけど……ってみなみ!失礼すぎるよ!私、いつもそんな夢みてないから!それ、不思議な夢じゃないし!
例えば今回だって……あれ?今回だって……?
どんな夢みてたんだっけ?あれれ、何故か思い出せないや。なんか大事な事だった気がするんだけど……
「ごめん、忘れちゃった」
「えー!?気になってたのにー!」
「シェル、その気持ちはわかるけどマリンに怒ってもどうにもならないでしょ。
あと、そろそろ朝ごはん行かないと遅れちゃうよ?」
またシェルをなだめてくれた。みなみは失礼だけどありがたい存在なんだよねぇ……
って、朝ごはん!?
え?本当に朝ごはんの時間なの?
てっきり私を起こすための口実かと……
「みなみっ!今何時!?」
彼女はサッと腕時計を見て答えてくれ
「えっと、七時五十分?」
「シェルっ!朝ごはんって何時まで!?」
彼女はパラパラと手に持ってる『海の合宿しおり』をめくって答えてくれる。
「えっとねぇ〜入場が8時までかなっ?」
もちろん可愛らしく首を傾げるのも忘れない。
まって、それって結構ピンチなんじゃ……
「よし、早く行こう!」
私は二人の手を取って走り出す。
「もちろん。マリンの巻き添えをくらうのはごめんだからね。」
「せっかく待っててあげたのに〜お礼の言葉はないの〜!?」
もう……二人共……呑気だなぁ……
【本文終わり】
プロローグは遊びまくってしまったけど、第一章はわかりやすくなるように頑張ってみました!楽しんでもらえるかな…
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