第3話

気づけば、夏の大会が終わって、7月も終わろうとしていた。うちの学校はなぜか3年にだけ夏休みの講習の最後の二日間テストをやる。そして、そのテスト最終日は俺の誕生日だった。テストも頑張った。春から少しづつだけど成績も上がっている。だから、ご褒美に何か買いに行こうと思った。何か誕生日らしいものを。マップの上から調べたら安くて美味しいクレープ屋があると知った。


去年までなら、こういう時、野球部の奴らといったんだけどなと思いながら、俺は1人で荷物を担いで教室をでた。せみは、暑さに負けずに元気だった。自転車に乗って学校を出る。途中で道に迷ったからなのか、クレープ屋の前には思ったよりも人がいたし、前には同じ高校の女子も何人かいるみたいだった。


「失敗したな、ちょっと恥ずかしい」

思わず口からこぼれ落ちた言葉は、幸い蝉の声にかき消されて誰にも聞こえないようだった。

このクレープ屋は本当に人気のようで、俺の後ろにも人が並び出した。ちらっと見た限りでは、他校の女子2人組のようだった。同じ高校の人じゃないことに安心したけれど、あまりにも周りに女子しかいなくて、店の中で食べるつもりだったけれど、テイクアウトをすることに決めた。


カラカラと店のベルがなり、目の前からごっそり人が消えた。もうすぐ俺の番が来るらしい。意外と、すぐ俺の番が来た。でも、俺はテイクアウトにすると決めたから、それなら、後ろの女子に譲ってあげた方がいいんじゃないかと思った。女子に話しかけるなんて今まであんまりやって来なかったから、ものすごく緊張する。


「あの、すみません、僕テイクアウトにするんでよかったら先にどうぞ」

そういうと本当に驚いたようで、2人はお礼をいうとすぐに中に入っていった。


そこから10分ほどして、本来なら後ろの彼女たちの番が来た。俺は店先の店員にテイクアウトしたいことを伝えて、商品が来るとすぐに店をでた。近くの駅に停めた自転車まで言って1人でクレープを頬張った。

少し歩いただけなのに、クレープは溶けてデロデロになっていた。それでも、クレープは美味しかった。


【この時の女の子視点はこちら】

https://kakuyomu.jp/works/16818093092961656242/episodes/16818792437442482311

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