僕の心には壁がある

欠陥品の磨き石 磨奇 未知

第1話 僕の何気ない一日

「おーい ゆうと兄やん!!」 きしめく施設の中で、子供の産声が響いた。

子供の無邪気な声に僕は自然に笑顔になっていた。

「あの…ゆうと兄やん…」 今度は別の声が聞こえてきた。

雨のような静かな声だ。

勇気を振り絞ってきたのだろうか。


僕はここ、夕日ヶ丘孤児院の職員だ。

子供達の世話をすることはすごく大変だが、 子供達の笑顔をみているとそうも言ってられない。

子供達が社会でやっていけるように育てるのが私の役目だ。

僕が社会でやっていないようじゃ子供達に合わせる顔もないからな。

僕は重い腰を上げて、子供達のところに駆け寄った。

「どうした?もしかしていつもの鬼ごっこか? 俺の足はチーター並みに速いぞ〜。 ガオ〜 ガオ〜」

僕はしゃがみながら腰を曲げ腕を大きく広げてライオンのポーズをした。

「それライオンだよ 兄やんポンコツだ笑笑」 子供達が笑い声を上げていた。

どうやらツボに刺さったみたいだ。

ここに勤務してまだ2年だか いまだに子供達のツボがわからない。

僕がひねり出した渾身のボケだが ここまで受けるとは想定外だった。

僕は子供達と自分の価値観の違いに少し壁を感じていた。

いや自分が勝手に壁を作っているだけなのかもしれない。

僕は心の中にそっとしまった。

少し話は逸れてしまうが

僕はここ

夕日ヶ丘孤児院ではゆうと兄やんと呼ばれている。

他の職員達は杉山さん 山添さんなど 敬語で呼ばれているのだが 僕は違う。

親しみやすいと思われているのはすごく嬉しいことだが職員としての威厳がない気がして少し複雑なところだ笑

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