第11話

十九時近くに家に帰る。

夕飯は既にできている。

家族より少し遅れて食卓に顔を出す。

本当はこんなにギスギスした環境の中で夕飯を食べるなど、気が引ける。

家族は同い年同士で結婚した両親と大学一年生の兄がいる。

兄は中学に上がるとほぼ同時に反抗期が来て、それからずっと意地悪な性格のままである。

何かにつけて私に文句をつけ、挙句の果て両親に酷い言葉をぶつけた後に部屋に篭もる。

しかし、父が決めたお家ルールに、家族皆で食事をするというのがあり、そのせいで皆で夕飯を食べなければならない。

だから家に帰りたくなかったんだ。

というものようにそう思っていた。


「ご馳走様でした。」


そそくさと夕飯を終了させ、食器を片付けると荷物を自室に持っていき、それから着替えを持ってお風呂へ行く。

風呂が唯一の安心出来る場所だ。

ゆっくり入ろうとは思わないが、毎日湯には浸かりたい。


風呂から出ると自室に篭もる。

まぁ、結局私も部屋に篭もるのだ。

兄と同じだとは思いたくないが、籠るのは変わらない。

リビングにいたって、兄と父や母の喧嘩を見るだけだ。


パソコンを起動させて、最近ハマっている通話アプリを起動させる。

アプリの通称、コード(正式名称、コードオブヒューマン)、世界中の人と通話や会議、チャットでのやり取りができる便利なツールである。

私は最近コードで、あるサーバーに入ってその中の人達とお話をしながら勉強している。

サーバー内には社会人が多く、色々と勉強になる。

メンバーは私が高校であることを知っていたが、子供扱いはしなかった。

それがまた、私にとっては良かった。


「徳ちゃん、こんばんは」

「こんばんは、麒麟さん。」

「今日も来たんだね。」

「はい、気に入っちゃいました。」


最近仲良くしている社会人の麒麟さんは、このサーバーの管理者の友人である。

サーバーに誘ってくれたのも麒麟さんだ。

管理者の友人というのもあり、麒麟さんはサーバーの運営側の人間であるが管理というよりは、サーバー内のメンバーのトラブルシューティング係のような感じである。


「今日は学校どうだった?」

「今日の学校…、まぁいつもとそんなに変わった点はなく、相変わらずぼっちですね。」

「そっかぁ、まぁ一度孤立しちゃうと中々ね」

「そうなんですよねぇ。あ、でも先生と話しましたね。あと隣のクラスの男子とも。」

「おー、いい収穫じゃない。何の話したの?」

「勉強の話です…。それで何か、私。東大目指すことに…。」

「え!?」

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