第10話
想像もしていなかったことは、日常の中で割と多く起きる。
例えば、悪いことをしていないのに朝先生に話しかけられる。
例えば、今まで気にもとめなかった隣のクラスの男子生徒が階段で話しかけてくる。
例えば、その男子生徒がお昼休みに話しかけてくる。
例えば…。
「実は、この高校の進学実績をあげようという取り組みが今年から始まるんだ。今の三年生はもう遅いし、進路を決めちゃっている生徒が多いからやらないんだけど。二年生から特別クラスを用意することになったんだ。」
「何ですか、それ?」
「大学進学の意思のある生徒を寄せ集めたクラスだ。だがこの意識の高い生徒というのが中々いなくてなぁ。本当なら二年生からこのクラスを設けようと思っていたが、一クラス分もいないと来た。だから、一年生と二年生の大学進学を真剣に考えている生徒を集めようということなんだ。」
一年生の一番最初の定期試験を終えたばかりの青二才二人にする話ではない。
と、徳間は思ったが、考え直した。
沢井は入学前から大学進学を考えていたではないか。
そんな奴がいるのだから、そんなこと思ってはいけない。
「そこで、前回試験の学年順位、上から順番に話をすることになったんだ。で、どうかな?」
「僕も、徳間さんもやりますよ。」
「え?」
勝手に自分の分まで返事をされた徳間は少し戸惑った。
しかし、結局高みを目指しているのは間違いないので、遅かれ早かれ先生に相談するつもりではいた。
徳間がこの進学クラスの話を受けないという事は、まずない。
それは沢井から見ても想像に難くない。
だから、勝手に返事されてしまい、そして戸惑ったが、結局頷いた。
「それじゃあ、君達は決まりだね。まだ早いと思うけど、目標はあるのかな?」
「東大」
「徳間さんは?」
「私も。」
「まぁ、目標は高くあるべきだ。東大目指すなら、先生は力になれるかもね。」
「そりゃ、先生だから、そうじゃないんですか?」
「それもそうなんだけど、母校だから。先生の。」
「えー!先生東大出身なの?」
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