第9話
昼休み、沢井に朝と放課後の勉強会を約束させられたが、今日の放課後は既に先約があるのでどう考えても勉強会に参加することは出来ない。
放課後になると徳間はいつものように教室に残って一人で勉強していた。
そもそも今日は苗木先生から残るようにと伝えられていたので、勉強していなくても結局残ることになっていた。
徳間が教室に残って、今日も勉強している所を発見した沢井が教室に入ってきて、徳間に話し掛けた。
「徳間さん、今日もいるんだね。僕のお願い聞いてくれる気になった?」
「今日は苗木先生とお話をする約束しちゃったから残っているのよ。」
「なーんだ。まだ決めかねているんだね。」
少し寂しそうに、沢井は言った。
徳間の中に断ったら罪悪感が湧くように、そんな意思が込められているように、徳間は感じた。
今は、勉強が好きだから一緒に勉強しても問題ない。
だから断るつもりなど、毛頭ないのだが、沢井に催促されると何だか首を縦に振りたく無くなる。
数学の問題集の続きを解いていると、そのうち沢井もノートと参考書を広げて勉強し出した。
(さっき、今日は先約があるって言ったんだけどなぁ。)
徳間は今日の勉強会は断ったつもりでいた。
しかし、沢井は勝手に隣の机に座り、勝手に勉強を始めてしまった。
三十分経ったことだろうか。
苗木先生がやっと、教室に入ってきた。
教室にはお約束の一人と、なぜか一緒にいるもう一人がいた。
一人は今朝苗木が呼び止めた優秀な女子生徒。
もう一人はこちらも優秀だが少し問題のある男子生徒。
二人が一緒にいるところを見た事がないので、放課後までの間に何かあったのだろう。
「徳間さん、お待たせ。えっと、沢井くん?」
「お、沢井先生。僕も一緒に話聞いていい?今一緒に勉強してたんだ。」
「見れば分かるけど、今日は大事な話だから…、徳間さんがいいならな。」
「とーくーまー、いいーーー?」
沢井が駄々を捏ねている。
余程この空間に一緒にいたいのだろうか。
別に口のかるそうなやつには見えない。
だから、徳間は了承することにした。
「まぁ、いいよ、別に」
「じゃあ、話を始めたいんだが…。実は沢井くんには同じような話を明日するつもりだったんだ。本人が決めることだから一緒に話そうとは思ってなかったけど、まぁ、ついでだからいいか。」
それから話したことは徳間も沢井も、想像していなかった内容であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます