第12話

ポロンっ。


新たに人が入ってくるとなる音だ。

かなりプライベートな話だったので、ここで話しは一旦終了となった。

そこから、恋愛の話になった。

今日のボイスチャット参加者は、私(徳ちゃん)、麒麟さん(成人男性)、蜥蜴くん(同い年の男子高校生)、蝶々姉さん(社会人のお姉さん)の四人だった。

このサーバーは基本少人数での参加しかない。

人数が増えたら別のボイスチャットチャンネルに少しずつ人がずれていくというシステムだ。


「麒麟さんは最近出会いないの?」


蝶々姉さんは明るくて優しくて、大人の女性だ。

声から読み取れる雰囲気からも、いつも落ち着いているであろうことが分かる。

急に腹を立てたり、笑い出したり、情緒不安定になることなど無さそうな…。

恋愛の話はいつも、蝶々姉さんから始まる。


「さっぱりだね。高校生のいるところでする話ではないけど、今の出会いって言ったら、もう女子高校生しかいないかな。あとは同僚のおばちゃん先生とかね。」


麒麟さんは高校で数学を教えているそうだ。

職場に若い女性の先生がいないらしい。

高校の教員は男性がとにかく多いらしいし、女性の先生となると若い先生は数人程度だとのこと。


「徳ちゃんと蜥蜴くんは?青春でしょ」


この話しかけ方だと必ず蜥蜴くんから話し出す。


「俺もさっぱりですね。可愛い子は沢山いますけど、女子高校生って中々大人っぽい子いないですから。俺も蝶々姉さんみたいに落ち着いた女性と恋愛したいっすもん。同い年の子はね、あ、徳ちゃんは違うよ。何か違う。他の子とは。うん。」


蜥蜴くんは高校一年生とは思えないくらい大人っぽい男の子だ。

私など子供に見えてしまいそうなくらい、何でも知っていて、恋愛の意味を通り越して尊敬してしまうような、そんな男の子だ。


「で、徳ちゃんは?」

「私は、友達すらいないので…」

「えー、気になっている人とかもいない?」

「それは…、でも先生くらいしか魅力的に見えないですよね。蜥蜴くんと同意見です。」

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