第6話
昼休憩は一時間程である。
一般的な普通科の高校と同じように、徳間の通う高校も通常通りのスケジュールならば、十二時五十分から昼休憩の時間は始まる。
教室が騒々しく、賑やかな雰囲気で皆それぞれの溜まる位置に移動していく。
食堂があるので、食堂で昼食を買って食べる者もいれば、他クラスに遊びに行く者もいる。
徳間と言えば、五階にある図書室の前のちょっとした空間でいつも食べていた。
その付近には生徒は基本いなく、誰かがいるとすればそれは司書さんだった。
理解ある司書さんのおかげでこの空間は平和を保っていた。
「よいしょっと。」
弁当を食べ終わると、いつものように図書室に入り(図書室は飲食の飲は許可されたものであっても、食は禁止されていた)、勉強道具を広げようと鞄に腕を突っ込んでいた。
数学の参考書、問題集、ノート…。
(あれ?)
鞄の中をいくらガサガサと探っても必要としているものは出てこない。
どうやら徳間は筆箱を教室に忘れてしまったらしい。
教室に取りに行けば良いが、正直あの騒々しい場所に行きたいとは思わない。
だが、行かないと勉強ができない。
「徳間さんだよね。また会ったね。」
軽々しい口振りの、馴れ馴れしいような話かけ方。
彼は朝階段で声を掛けてきた…。
「えと、二組の…」
「沢井。よろしくね。」
名前を覚えられてない事に対しては何も感じていないような雰囲気。
徳間は沢井が何を考えて、何をしたいのか分からずにいた。
理解に苦しむような、そんな相手。
だが、何も考えずに生きてきたような阿呆で馬鹿な他の生徒達とは少し違うような感じがした。
何を考えているのかはさっぱり分からないが…。
今朝沢井と出会って、少し教室を見るようになった。
どうやら沢井は有名人のようで、女子生徒は沢井に夢中ならしい。
「で、何か用かな?」
「いやさぁ、徳間さん、筆箱教室に忘れたでしょ。」
「何で、あなたがそんなこと知っているのよ。」
「僕ちょっと観察しててさ。」
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