第7話
「…」
「いや、筆箱持ってきてあげようと思ったけど、やめちゃった。」
少し期待をした自分が馬鹿だったと、徳間は思ったがやめてしまった理由も気になった。
なぜ彼は、筆箱を持ってこなかったのか?
それで折角図書室まで来たのに何をしたいのか。
「え、じゃあ何しに来たの?」
「徳間さんとお喋りしに来たの。」
(何言っているんだこいつ。)
徳間が高校に入学してからと言うもの、教員以外で徳間に積極的に話しかけてくるような者はいなかった。
『変わり者』
徳間はそう揶揄されて、生徒の輪の中から遠ざけられていた。
男子生徒からは別に何も無いが、女子生徒からの省かれようはそれはもう、とんでもないものであった。
誰も自分になど興味を持っていない。
それどころか話し掛けると迷惑そうな顔をしてくる。
自分は嫌われ者だ。
と言うように思っていた、徳間は興味津々に話し掛けてくる沢井を(おかしな奴だ)と思った。
本当は勉強をしたいところだが、教室に筆箱を忘れてしまったので、今日は沢井に付き合うことにした。
仕方なしに勉強道具を鞄にしまう。
「徳間さんって、いつも勉強してるよね。放課後も教室に残ってさ。」
「うん」
「徳間さんって、学年トップなのに何で入学式の時学年代表じゃなかったの?」
「断ったから。」
「あー、なるほどね。あ、そうだ。何で僕が君にこんなに興味あるのか知りたい?」
興味あるような無いような。
別に知りたくもないし、知らなくてもいいし、でも知っててもいい。
正直どちらでもいい。
だが、会話を終わらせるとこの後暇になってしまう。
それが嫌だと言う理由だけで、徳間は首を縦に降った。
「実は、僕が学年で二番目なんだよね。入学試験の時、絶対僕が一番だと思ってたのに二番だった。で、最初の試験は絶対に一番を取りたくて頑張ったんだけど、また二番。だから先生に一番のやつを教えて貰ってそいつを観察することにしたんだ。そしたら友達もろくにいない陰キャだったわけよ。」
「陰キャで悪かったわね。友達もろくにいなくて。」
「僕は見ての通り、陽の人間なんだけど。だけどこの学校で友達を作る気にならないのは、何となく理解できたんだよね。だってさ、やっぱり頭のレベルが低すぎるんだよね。僕、高校なんてどこでもいいやって思って、受験の時友達と一緒に受けたんだよね。そしたらその友達、なんと八組になったんだ。クラスが離れすぎてすれ違いもしない。家は近いけどあっちは起きるの遅いから段々とここの距離までも遠くなっちゃってさ。」
「それで、何が言いたいのよ。」
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