第24話 魔法石香花:マジョラン



 『魔宝石香花』、通称マジョラン。またはマジョラム。


 元勇者様が引退後に始めたと言うお店、ジャランジャランで一輪買ってみた。


 『魔の都市』跡の花畑から採れると言われているマジョラン。


 一度見てみたいと思っていたけど、まさかの一輪600シューイーズ。


 まだ子供の僕にはけっこうなお値段だ。


 将来はマジョランの花束を運命の伴侶にあげるんだ、って師匠に言った。


 そしたら、「マジョランは挿し木で栽培できるぞ」と言われた。


 この一輪を土に差して世話をしたら、増える、ってこと?


 将来に備えて師匠の許可をもらって庭の一部を借りることにした。



 僕はまだ十四歳だけど、学校には通っていない。


 魔法とメカニックの混合の研究をしている博士の弟子になった。



 僕の仕事と言えば、おもに部屋の掃除。


 本棚の整理。



 時々「どこに行ったのか分からなくなったじゃないか」とぷりぷり怒られる。


 まぁ、そんな師匠が可愛いから幸せの類いなんだろう。


 家には帰りたくない。



 最近、博士が「コドモドラゴン」と言う小型の恐竜の標本らしきものを手に入れた。


 師匠が「コドモドラゴン」って呼んでるけど、多分「コモドドラゴン」だ。



 師匠は早く僕の気持ちに気づかないかな?

 

 僕はもう十四歳。


 師匠は花園の花をまだ咲かせたことがない二十五歳。



 そろそろ師匠に気持ちを伝えようかな?


 貴女に恋をしたのでなんとなく弟子をしています、って。


 将来に備えてのマジョランの挿し木も、貴女のためです、って、さ。

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