第23話 古代魔法

 

 

 今まで色んなことがあって、今は王室御用達の『花屋』を営んでいる。


 パティーを組んだのは魔法使いの女で、俺は元勇者。


 魔物を倒したり、焚き火にする枝を拾ったり、一緒に蛇を食べた日もあった。


 正直、恋愛はしていないが、恋心はくずぶっていた。


 彼女は大切な仲間なんだ、と言い聞かせて自分をなだめる夜もあった。



 そんな彼女は白魔女で、攻撃魔法も使えるタイプのだいぶスゴいひと。


 言動からは生まれが分からないように育てられたらしいけど、王族の刺青があった。


 多分、何かあった時のためになんだろう。


 本人は赤子の頃に彫られたもので意味も教えてもらえない、って言っていた。


 だから彼女が『姫』かもしれないことを気づいていて黙っていた。



 彼女は旅の途中で聖堂に選ばれて、巨大な魔法力を手に入れた。


 一度きりの古代魔法が使えるようになった、と彼女は涙声で言った。


 その時は正直、事情を知らなくて普通にはしゃいだ。


 皆の期待に応えるぞ、って。



 魔の都市は彼女の放った古代魔法で消滅した。


 そしてその代償に、彼女は粒子になってゆっくりと消えてしまった。


 その間、色々、色んなことをぼやいたり叫んだりして泣いたような気がする。


 そしてそよ風の一部になった彼女は「空飛ぶ船が来るよ」と微笑した。



 ほどなくやって来た真っ白な巨大飛行船は三体。


 泣くのに疲れた俺を無視して船は作業をはじめて、バリアと共に魔法が発動した。


 聖堂にいた時点で彼女は王族に連絡を取り、約束をとりつけてあったらしい。


 そして船にいる魔法使いたちが、魔の都市の跡をバリアと共に一面を花畑に変えた。


「「できることをしたまでです・・・」」


 俺はそのあと船に乗って勇者を辞めて、結婚して子供もできた。


 『花屋』を営んでいるのは国への感謝じゃなくて、相棒を愛しているからだ。

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