第19話 砂漠のザン
砂漠には、ザン、と言う神に昇格した精霊がいる。
それは遠い昔幼少の頃、神がかりで有名な老婆から聞いた話だったかと思う。
いずれその砂漠の砂を、全て宝石に変えるだろう、と言う予言。
成人して街に働きに出ていたが、諸々事情が出来て『砂漠の民』の里に帰った。
宝石商に友人が何人かできるくらいには、出世した。
いくばくか夜の浮名も風に吹かせた。
そんな俺が『砂漠の民』として里に戻ってきたのは、目利きだから。
そしてこの事情が秘密・・・里の極秘に関わっているから。
砂漠が、宝石に変わり始めている。
最初はガラスの破片だと思っていたらしいが、どうやら診ると水晶のさざれ。
そしてそれは自然物であり、誰かがまいたはずはない。
砂漠の民の聖域で起きたことであり、俺の見解はこうだ。
伝説通り、この砂漠地帯のある程度の地区が、宝石のいしづきである。
つまり、キノコのように、生えてくる準備をしている。
最近その情緒が信憑性を帯びている。
少なくとも聖域に、日に日に小さなさざれやら
尖りを見せる大きさになった水晶が発見された。
この場所は以前、『水晶の森』と呼ばれた地区である。
文献によると、キノコのいしづきのような意思がここにはある、と。
そのような古い言葉がある。
そのいしづきは昔のなまりで、「ザン」と言う。
水晶の森はザンの意思により、まだ果てていないのかもしれない。
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