転生したら異世界万能チートキャラだった件

狼谷怜

𝑷𝒓𝒐𝒍𝒐𝒈:【徹夜死〜転生〜】

「うしっ! レアアイテムゲット!」


俺は大学3年生の凡人である。

というのもこうやってゲームをやって独りで喜んでいるような男だからだ。


恋人も、幼馴染も、弟を溺愛してくれるような姉すらもいない、ただそれだけの男。


これといった才能も持ってないし、大学の試験結果もそれなり。成績も中の上くらいの普通の人だ。


ただ、それでもゲームだけは辞めない、ゲーム大好き人間だ。好きな物はとことんやるのが俺のスタンス。


親は俺が一人暮らしを始めた時になんやかんやの援助だけしてくれて、それ以外は好きにさせてくれている。


が、俺は現在進行形で徹夜中だ。

かれこれ4日連続で徹夜している。それを3週間連続でなんてやった当然身体が持たない。


つまりこの眠気は相当にまずいやつであることがよく分かる。


――バタッ


こうして俺は目を覚ますことなく深い眠りについた。いや、どゆこと!?


俺、獅子原優希、大学3年生は死亡した。

死因は『徹夜死』というなんともダサい死に方をした。


大人であれば過労死なんて言うんだろうが、徹夜死なんて今まで経験したことないぞ!?

いや、死ぬこと自体経験したことないんだけどさ。


でもすごい安らかな眠りについた気がする。

だって体のどこも痛くないんだもん。若干頭を打ったような痛みがあったけど。


んで、今俺はどうなってるんだろうか。

謎に意識だけは保っているけど、死んだあとって少しだけ意識が残るものなのだろうか。


まぁそんなこと気にしても意味はないんだけど。

母さんたち絶対に騒ぐだろうなぁ。


なにせ心配性だし。


でもダサい死に方したよな。


来世ではちゃんと生きようかな……


主様マスター……』


ん?

誰の声だ?


主様マスター……聞こえておりますか?』


君は誰?

それにマスターって?


AIか何か?


『私は主様の自立型思考スキルです』


自立思考スキル?

なにそれ?


勝手に物事を考えてくれる能力的なやつ?


『はい。認識的にはそう捉えてもらって構いませんが、詳しく説明したほうがよろしいでしょうか?』


詳しく説明してくれるならありがたいけど……どちらかと言ったら今俺がどういう状況なのかを教えてほしものだよね。


え、てか、俺の声聞こえてるのか???


『はい。現状、マスターの意識は私が繋いでいる状態にあります。そして、マスターの魂は私と結合、隔離保存しているため意識のみは生存していることになります。さらには、マスターの声は意識下の中で私にのみ聞こえている状態です』


つまりはゲームで言う思念通信的な感じのやつってこと?


『それに近いものです。正確に言えば、私がマスターが無意識のうちに抱いている感情などを言語化して返信している状態です。つまりはマスターが何も思わなければ私との会話ができないことになります』


なるほど。

つまり俺が黙ったら君は何もできずに消えてしまうと?


『……そうなります』


なるほどね。でも今の俺は君のお陰で完全に死なずに生きていられているってことだよね?


つまりは俺が黙り込んだら君とのパイプを失うってことだよな。


『はい。ですが、マスターが望むのであれば肉体を再構築することも可能です』


え、そんなことできるの?


『可能です。ただ、条件として私をマスターの固有スキルとして魂と共に定着させてください』


なるほどね。

肉体の再構築をする代わりに対価として俺の固有スキルとして身につけてほしいってことね。


『よろしいでしょうか?』


うん。

いいよ。


というかまた生き返れるなら何でもしてくれ。

転生とかできたら最高だし。


生き返してくれるならそれぐらいのお礼はしないとね。


『ありがとうございます。そこで一つ提案がございます』


提案?


『マスターの望んだスキルをいくつか付与することが可能ですが、必要となりそうなスキルはありますか?』


スキルも同時に習得できるってこと!?

君万能すぎない!?


『ありがとうございます。スキルの同時獲得を行いますか?』


ぜひ頼む!


『了。先に肉体の再構築を行います』


名も知らぬ自立思考スキルさんとやらは俺の肉体の再構築を始めた。


俺自身何がなんだかわからず、このスキルさんの言うとおりに反応していただけなんだけど。まぁ、生き返れるなら何でもいいか。


それはそれとして、俺の死体って誰か見つけてくれてるのかな。

そうなっているといいな。


――――――――――――――――――――――――――――――


現実――


獅子原優希が徹夜死という滅多にない死に方をしたことで、両親と友人たちは悲しみと同時に疑問のみが浮かんでいた。


彼は友人からも、周囲の人からたくさん慕われていたのだが、それに気づかずに亡くっなったことでたくさん悲しまれた。


そんなことはさておき――


――――――――――――――――――――――――――――――


虚無空間。


そこは人が死んだときに一度は訪れるであろう場所。


何もない空間の中には様々な魂が混在している。

ただ、その空間にいられるのはほんの僅かな間で、そこは幻想世界に近いと言われている。仮説がいくつもある中で人はそこを黄泉の国と呼ぶ。


『……完了しました。主様の肉体、及び依代を再構築に成功しました』


どうやら終わったみたいだね。


これってもう声とか出せる系?


『はい、可能です』


じゃあ早速――


「お? おぉ?」


俺はゆっくりと目を開き、最初に自分の身体を見た。


手と足は死ぬ前よりスラッとしている……のか?

身長は少し高めだな。


服は――


『服は私の方でマスターに似合いそうな服装を用意しました』


「へぇ、死ぬ前のやつと同じような感じで着心地抜群だよ」


『ありがとうございます』


「これって、あれか、オドを使って作ったみたいな?」


『はい。正確に言えばマスターの記憶を解析し、それをもとに魔素から生成しました』


魔素?


魔力みたないもの?


『それと同様のものと考えてください。本質的には少し違いますが、大きな違いはありません』


「なるほどね。それで? このあとは?」


『マスターの望むスキルを習得します』


あースキルね。

そういえば君の力でなんでも獲得できるんだったね。


『なんでもというわけではありません。あくまで私が付与できるのはスキルの基盤となるもののみです』


「つまり基盤を作るからあとの習得は独自にやってくれってことね」


『……申し訳ありません』


あ、やべっ、今の言い方は流石に――


「いや、ごめんごめん。頼りになるからもしかしたらって過信しすぎたよ」


『否、私はマスターの意思のもとに動きます』


「ならいいんだけどさ、俺がマスターって言うのは?」


『マスターはマスターです。私は主に従うのみですので』


答えになってない気がするけどまぁいいか。


「じゃあ早速お願いしてもいい?」


『はい。いつでも』


「じゃあはじめに君のスキルを強化しよう」


『……!? 私の、ですか?』


「そ。さっきの話を聞いている感じ、転生先って日本じゃないんだよね?」


『はい。そうなります』


「だよね。だからわからないことが多いと思うんだよね。そこで君には俺のわからないところまで補佐してほしいって思うんだけど」


『……完了しました。マスターの意思のもと、自立思考スキルが進化しました』


マジか!?


『自立思考スキルからユークリッドスキル、絶対者アブソリュートに進化しました』


アブソリュート?

絶対者ってこと?


『はい。マスターの記憶を参考に全知全能の能力となっています』


なんかすごいスキルになったね!?


まあ、かっこいいからいいか。

ついでに全知全能とかすごいな……


「じゃあ、全知全能の機能を使って、全系統の魔法を習得できる?」


『大本となる系統を教えてください』


「炎と水と、風に雷に、闇と光くらいかな。欲張りすぎる?」


『否、マスターのお陰で私の能力も向上しているため、習得は可能です。ただ、すべての属性を獲得するのには時間がかかります』


まぁそうだろうな……属性によって向き不向きもあるし、それを使えるようになるには時間もいるだろうし。


「わかった。じゃあ、闇と光はじっくり習得できる基盤を整えてくれ。残りの火とか水とかの通常属性の習得を優先してくれ」


『了解しました。おまかせを』


これで一安心かな。

というか、属性技が使えるってことは完全に異世界だよな?


異世界って漫画とかの世界線にしか存在しないって思ってたのに、意外と有り得る……のか……?


まぁ、でも、神話とかだと異世界についてのことが言われてたりするからあながちあるのもかもしれんけど。


『異世界というのはいわゆるパラレルワールドのようなものです』


「パラレルワールド? ってたしか、平行世界みたいなやつだよね?」


『はい。マスターの認識している世界とは別の分岐を果たし、並行して存在している世界のことです。ただ、それは空論とされており、その大半は異世界という形で認知されていると思われます』


「つまり俺の記憶の中にあるパラレルワールドの認識的には今、絶対者さんの言ったのが原理として成り立つってこと?」


『そういうことになります。ただ、私はマスターの記憶を元に異世界というものがどういうものかを解析しました』


なるほどね。

つまり俺の転生先は平行世界、パラレルワールドの一端にある別の世界で、異世界=パラレルワールドって図式になるわけだ。


異なる世界って点ではパラレルワールドが合ってるのかもな。


「あ、絶対者? あとどれくらいで終わりそう?」


『すでの基盤を作り終えています。異世界とのリンクを繋げてありますが、転送を行いますか?』


「さすがだね。じゃあ早速頼む」


『了解です。少し光が入ります』


そう言うと俺の目の前は眩しいほどの光でおおわれた。

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