第9話 唖然

美菜が、遥斗の家に入った。

遥斗とは同級生で、二人が幼馴染であることは知っていたが、もう接点はあまりないと思っていた。しかも、なんでこんな夜に、?

俺は嫌な予感がして中庭にこっそり入り、彼らがリビングで繰り広げている行動を見ようとした。まあ半分犯罪だ。ただ美菜がやってることも半分犯罪だろうと自分を正当化させた。

「浴衣ありがとう、実風褒めてくれた。」

「ああ、よかったな」

雑だろ!返事。もっと丁寧に応対しろよ

「なあ、思ってたんだけど」

「んーなあに」

「首のキスマ、ばれなかったの」

え、、キスマ?

「えみえてたの、きづかなかった!まあ多分バレてないよ」

バレるって、俺に?

「そっか、なあ、今日もう一回していい」

「…いいよ」

俺の中にあったものがガラガラと音をたてて崩れるような気がした。

俺は泣きそうだった。

あんな甘い口調の美菜、見たことない。

しかももう一回って、あいつら、付き合ってるみたいな…

ああ、涙が止まらない

そんな状況を影で見ているもう一人の人物に気づく由もなかった。

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