第10話 返却

実風と別れて、私は彼に浴衣を返そうと家に向かった。玄関に入った途端、彼に抱きしめられるのは予想外だったけど。

「さびしい、構って」

さっきまで私が性奴隷のようだったのに、今ではすっかり立場が逆転していた。

「はいはい」

私もまんざらでもなかった。

私は手を繋いだことや花火を見る前に道に迷ってしまったことなどを色々話した。

わたしの遥斗に触った手を汚れてるといったことは言わなかった。

「美菜」

「ん」

「なあ、思ってたんだけど」

「んーなあに」

「首のキスマ、ばれなかったの」

慌てて鎖骨を見ると、確かにそれはキスマークだった。

「えみえてたの、きづかなかった!まあ多分バレてないよ」

嘘だ、絶対バレてる。彼がこっちをちらっと見たときに顔が曇ったのはそうゆうことか。まあ、いいか。あざとでも言い訳しておこう。

「そっか、なあ、今日もう一回していい」

「…いいよ」

これでいい。ただただ欲求を満たすためだけに私達はあるのだ。

でも、バレたらどうしよう。やばいなあ。

そう思っている彼女の顔は恍惚に満ちていた。

遥斗に抱きしめられながら、バレそうになっている自分の立場を考えると濡れてくる気がした。

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