第3話
対面式のキッチンだから、蓮華が楽しそうに料理する姿が、リビングのソファに座ると見えた。
困った顔をしている時は、傍に行き『どうした?』と声をかけていた。
「あのね、ジャムの蓋が空かないの」
『貸してみ』と言って蓋を空けてやるとフワリと微笑んだ。
「翠、休憩しようか?」
そう言って淹れてくれる珈琲は、サイフォンで入れる本格的的な珈琲。
鈴を転がした様な声で『翠』と呼んでくれた蓮華。
もう、逢えねぇ……
もう、『翠』と蓮華が呼んでくれる事がねぇ……
胸の奥がイテぇな。
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