第35話 太陽
3日間
天照大御神が徳仁天皇に天啓で伝えた通りお隠れになり、地球は闇に包まれた
世界中が大パニックに陥った
昼間の部分は突然夜に
夜だった部分は月の光が消えた
そして、何時間経っても朝は来ない
地表は急激に冷え、多くの植物は光合成が出来なくなり、枯れた
海洋表層を覆う、極微小な植物性プランクトンは光合成が出来ず、地球の3割の酸素供給源が不安定に為る
冷える一方の地表はエネルギー代謝で強風が吹き荒れ、体感温度は更に冷える
日下部はふと気になり、ヤトに聞いた
「天照大御神様がお隠れに為ったと言うのは、単に光と熱が届かないだけで無く、物理的に存在しなくなったと言う事なのかい?」
ヤトには難しい言葉が理解出来なく、首を傾げたので、諏訪子が分かりやすく聞き直す
「ねえ、天照大御神様は居なくなったの?それとも消えて見えるだけ?」
「神は常に其処に居わす、ただ光と熱の恩恵が消えただけだ」
世龍乱が応えてくれた
「ですって、先生?どうかしました?」
「いや …… 万が一物理的に太陽の存在が無くなったのだとしたら、地球は11万km/sで太陽系外へと飛んで行ってしまい、再び太陽が現れたとしても、もう元の位置には戻れない訳だよ」
地球は太陽の重力に引かれて、公転運動を続けている
円運動の中心から引力が消えれば、其れまでの移動速度を維持したまま、軌道を外れる訳だ
太陽光を失い、一週間で植物は全て枯れ果て、草食動物が死滅
肉食動物も後を追い、地上は絶対零度まで凍り付く
広大な海水は全てが凍るのに数百年掛かるが、酸素と窒素は固体となり地表に降り積もる
一月もかからず、全ての生命体が死滅する死の星と化す
3日と言うのは、回復可能なギリギリのラインであった
「朝 …… か」
3日ぶりの太陽光は、なんだかとても久し振りに感じた
日出る国に相応しく、最初の朝日が日本列島に降り注ぐ
ヤトが現れて10日間
日本では約3千万人が死んだ
電気が止まり太陽が消えた3日間で、世界では10億人以上が死んだが、その内飢餓で死んだのは全体の半数にも満たなかった
全人類が太陽が在ると言う当たり前の事実に感謝した
皇居の賢所へ出向いた徳仁天皇は、黄櫨染御袍に着替え天照大御神への感謝を表すと、再び天啓を授かる
地球が一周して翌日
神国日本が世界へ向けてメッセージを発信する準備が整った時点で、雷禅が分子運動を解放し、世界は再び電気が使える様に為る
「天照大御神は人類への警鐘として3日間の試練をお与えに為りました。全世界の皆さま、忘れないで下さい。神とは人間の都合の為に在るものでは無く、人間の過ちを教導して下さるもので在る事を … これより以降、日本国は神国日本として、日ノ本と名を改め自然との調和と感謝を国是とする新たな国として生まれ変わる事を宣言します」
軍国主義とは無関係な宗教国家への転身なのだが、甚大な被害を被った世界は素直に受け止める人間より、この天災の原因が日本に依るもので在るとこじつけた
怒りの矛先は全て日本のせいに為る
トランプ大統領は在日米軍の即時退去命令を発し、全部隊及び領事や民間人を含む在日アメリカ人の退去が完了次第、日本への攻撃を示唆
その裏で、志那の習首席、フランスのマクロン大統領と協調を打診していた
それを受け、フランスと志那も日米関係の悪化懸念を理由に在日邦人の強制帰国の為に、輸送艦と輸送機を日本へ派遣する事の了承を求め、政府が機能不全の内に勝手に国外避難を開始し始めた
「あれだけサラミ戦術で日本乗っ取りを進めて居た志那が、此処に来て数千万人もの志那人を退去させようだなんて、おかしく無いですか?」
「悪いのは日本のせいにして、核攻撃でも仕掛けて来る積りだったりしてな?」
「まさかぁ?」
佐伯が茶化すが、そのまさかである
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます